第30話

彼と最後のデート…。

でも私にもう悲しみはない。

彼は私の死を乗り越えてくれた。

きっといつか声もでる。

そしてこれから新しい恋をして、彼を支える誰かと一緒に素敵な家庭を築き上げていくんだ。

子供が生まれたら、その命を慈しみ愛に溢れた人生が彼を包む。

そしてまたその子供が愛を見つけて、家族を作る。

命は繋がっていくの。

私はその中でいつか彼の記憶から思い出に変わって、消えていくかもしれない。

でも構わないよ。

彼が幸せなら…。

もう私は充分幸せだったから。



その小さな丘には人がいなかった。

太陽はすでに高く昇っていて、暖かい気温の中で風が優しく吹いている。

彼は展望エリアに着くと、私を降ろして大きく深呼吸する。


―こんなに綺麗な景色あったんだよな。少し前までそんなことも忘れてたよ。―


彼は画面を見せてくれた後、突然寝転んだ。

そして私に手招きをする。

驚いたけど私も彼に近づくと彼は私を抱き上げて、胸の上に乗せてくれた。

二人でのどかな空を見上げる。

あぁ、なんて幸せなんだろう…。

私の魂がこの後どうなるかなんて分からないけど、覚悟はできてる。

でもこうしていると彼との別れにはつい覚悟が緩んでしまう。

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