第29話

戻ってきた…戻ってきたんだね。


私も涙が溢れて、彼の胸に飛び込んだ。

彼も私の存在を確かめるように、強く抱きしめる。

私の姿は変わってしまったけど、二人はようやく再会を果たせた。


―本当は分かっていたんだ。でもどうしても認められなくて…。ずっと逃げていたのは間違いだった…。でもこうして鈴は戻ってきてくれたんだもんな。もう逃げない。ずっと一緒にいよう。―


彼は携帯に文字を打ち込むと涙を拭って私に微笑んだ。

待ち望んだ、嘘のない本当の笑顔。

私はもう一度彼の顔に自分の頬をすり寄せた。

でも私には残された時間は僅かしか残されていない…。

そう、もう約束の六日目…。

そして彼に私の正体がバレてしまった以上、ここにいることは許されないはず。

『あの声』が聞こえてくる前に最後に、ちゃんと彼とお別れをしなければならないのだ。

午後になり、その事をまだ知らない彼は、とある場所に連れてきてくれた。

そこは彼のお気に入りの丘だと言う。

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