第28話
地面の方に背を向けたまま、彼の顔を見ながら落ちていく。
あぁ、私はまた落ちている…。
あの時と一緒だ。
また彼に何も伝えられず、死んでいくんだね…。
しかし今度は前とは違った。
突然、下に落ちていこうとする体が止まり宙吊り状態になる。
そして片手の温もりに気づいて顔を上げると、落ちないようにしっかり私の手を掴んだ彼の姿があった。
彼は軽々と私を引き上げホッとした表情を見せる。
しっかり抱き抱えられながら見たベランダの床には、先程まで握りしめていた写真が散らばっていた。
そしてその中の一枚を手に取る。
それは私が寝室から持ってきたオーロラの写真。
それから部屋に入った彼は携帯を持ってきて何か文字を打ち込んでいる。
見せてくれた画面を見ると、驚く内容だった。
―君はずっと俺の側にいてくれたのに気づかなくてごめんな…―
まさか私だってことが気づいているような内容。
私が動揺していると彼は再び携帯に打ち込む。
―鈴なんだろ?さっき君の声が聞こえた気がした…。俺の心が弱かったから、君が見えていなかったんだ…。ごめん…ごめんな、鈴。―
彼からは涙が溢れていた。
それでも私が見ていたいつもの優しい瞳だった。
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