第27話

ボヤける視界の中に見えたのは、私の写真を持てるだけ握りしめてベランダへ向かう彼の姿だった。


まさか…


彼はまだ私が生きているという思い込みが救いだった。

しかしそれがなくなってしまい、生きる理由がなくなってしまったのだ。

彼はベランダの向こうにある彼だけにしか見えていない楽園に引き込まれていく。

止めなくちゃいけないのに、体がしびれて動かない。

ここで終わってしまうの…?

彼も私も…。

いいえっ!まだ諦めないっ!


私は力を振り絞って立ち上がり、急いで寝室の写真をはがす。

そして彼の前に回り込んだ。

しかし何も見えなくなっていた彼に蹴飛ばされてしまい、私はコロコロ部屋の中を転がる。

でも負けずに立ち上がる。

先ほどの衝撃もあって足元がふらつく。

こんな時、この小さな身体がもどかしい。

もし私が私で入られたなら彼を抱き締めて止められるのに。

そしてこんなに苦しんでる彼に囁くことができる…。

死なないで…

死なないで…

死なないで…!


その向こうに私はいない。

ここに入るよ!


私は手すりに乗って写真を彼に見せる。

その時、突然の風に煽られて私は大きくバランスを崩した。

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