契約六日目

第25話

明け方、私は物音で目が覚めた。

リビングの方に行くと、彼が写真を見つめたり、ベランダに出て空を見上げたり。

ただ突然、何かを思い出したかのようにテーブルに向かいお守りに手を伸ばそうとするが、直前で手を止めてまた写真を見つめる。

その繰り返しの行動をしていた。


ダメだよ…。

壊れないで…戻ってきて。

私は何とかしようと必死で彼の名前を呼ぶ。

言葉じゃなく、必死で心に訴えかける。

すると願いが通じたのか、彼がお守りを手にした。

そして私の方を見る。


そうだよ。それを開けるの。

もうすぐ私の呪縛から解放してあげるから。


彼はお守りを開けようと紐をとく。

布には所々赤い染みが付いているのが見える。

留学中、そのお守りがずっと支えだった。

会えない淋しさに耐える力をずっとこのお守りがくれていたんだよ。

片時も離さなかった…私の命が終わるあの瞬間まで。


お守りの中身は二枚の紙。

あの日、留学から帰ってきた日に私達は会う約束をしていたよね。

そしてこのチケットでプラネタリウムを見るはずだった。

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