第24話

いたたまれず涙を流す母。

それに続いて父が母を慰めながら言った。


「聡一君。私達はね、君には前を向いて生きてほしいんだ。すぐに忘れてくれとは言わない。ただ、娘を理由に逃げてほしくないんだよ。鈴花の為にも…。」


そう言って父が奥歯を噛み締めながら泣いた。

今まで弱みを一つも見せなかった父が見せた初めての涙。

しかし彼には何故二人が泣いているのか理解できず困惑している。

こんな状況に私は何も言うことが出来ない。

私はなんて罪深いのだろうか。

こんなにも人に悲しみを与えてしまった。


生きたい…

この暖かな世界に戻りたい…

でも…


少しして父が涙を拭い、母を促すようにして立ち上がらせる。


「取り乱して悪かったね。今日はコレを渡すだけで失礼するよ。…私達も鈴花と一緒に待ってるから。」


そう言って、父は布で作られた小さなお守りをテーブルの上に置き帰っていった。

しかし彼は両親が帰った後もそのお守りには触れようとしなかった。

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