第23話
彼に招かれ中へ入ってきた両親。
数日前、私の葬式で見た時より母はやつれ、父も疲れた顔をしていた。
始めに私に気づいたのは母だった。
とは言っても私の魂の存在に気づいたわけではないけど。
「あら、猫を飼ってるの?可愛いわね。」
懐かしい手で私を撫でる。
彼はにっこり微笑み、軽くお辞儀をしてから写真をテーブルの端に置いて、人数分のティーカップを用意する。
両親は複雑そうな表情を浮かべて責任座った。
そしてテーブルの上に置かれた写真を見て重い口を開く。
「ねぇ、聡一さん。やっぱり一度病院に行った方がいいんじゃないかしら…。鈴花とは本当に仲が良かったから、あの子が死んでしまって辛いのは分かるわ。でもいつまでもこんな状態は良くない。」
母が立ち上がって彼の肩に手を置く。
彼はカップを置き首を傾げながら携帯に文字を打つ。
“何言ってるんです?鈴は留学してるんじゃないですか。”
さっきまでの不安そうな顔とは逆に、まるでスイッチを入れ替えたかのように優しく微笑む彼。
そうか…今の彼の笑顔は現実を閉じ込める為のもので、仮面をつけてるだけ…。
何度も何度もそうやって仮面をかぶり続けて、そして本当の笑顔と現実に蓋をしたんだね…。
「聡一さん、お願い。ちゃんとあの子を送ってやって。あなたがこんな風になってしまったらあの子が…。」
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