第21話
彼は写真を一枚一枚拾い、驚いた顔で私を見る。
私は次にキッチンへ走った。
彼がつけてくれた鈴の音が心地よく鳴り、慌てて彼も私の後を追う。
キッチンにも十数枚の写真を広げておいた。
遊園地や山、ちょっと遠出する時は朝早く起きて一緒にお弁当作ったよね。
いつもウインナーは必ず入ってなくちゃダメなんだって子供みたいなことを言ってたっけ。
-もう私は一緒に食べれないけど、ちゃんとあの頃みたいに頬張ってご飯食べてね。-
次にリビングのソファー。
休みの日、たまにはどこにも出掛けないでこのソファーで並んでくれDVD鑑賞したね。
途中つい眠ってしまった私の寝顔を何枚も撮るから、消すようにムキになってすごく怒った。
悲しそうに謝ってくれたけど、こっそり現像してたの気づいてたよ。
-ホントはね、恥ずかしかっただけなの。素直になれない私よりいつも先に謝ってくれたよね。今度は私が謝るから本当の笑顔を見せて。-
次は洗面所。
ここは朝と夜、二人が必ず一緒に揃うところ。
たった一度だけ、私の提案でパジャマをお揃いにして並んで歯磨きしたね。
鏡に映る二人の姿に、彼は妙に照れちゃってそれっきりあのパジャマは着てくれなかった。
でも時々大事にしまってあるのを手にとって、着ようか迷って悩んでいるところ見ちゃったんだ。
-いいんだよ。無理しなくても。私のワガママ聞いてくれたように、たまには自分がワガママ言うぐらい強くならなくちゃ。その方がきっと周りの人も嬉しいから。-
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