第20話

滑り落ちた反動でノブが勢いよく戻る音と私の尻餅の音で彼は起きてきたようだ。

イメージとちょっと違った気づかせ方だったけど、駆け出す足音を聞いた私は急いで座り直す。

焦ってきた彼の顔は私を見て少しだけガッカリした表情になったのを私は見逃さなかった。

やっぱり彼は私がドアを開けて入ってくるのを待っている。

私はいたたまれない気持ちで一杯だった。

でもくじけてはダメ。

私に感傷に浸ってる時間はないのだから。

まずはドアポストの中をみてもらわなくちゃ。

私を呼ぶ彼の呼びかけに動じず、座ったまま見つめる。

そしてこっちにを見てほしいと言う呼びかけに気づいた彼は、しゃがんで私をまっすぐ見てくれた。

私は立ち上がってドアポストに手をかけてカリカリと引っ掻く。

しばらくそれを不思議そうに見ていた彼は、思い付いたようにポストを開けた。

すると何枚かの写真がヒラヒラと彼の足元に落ちる。

私が入れておいたのは、彼がずっと眺めている私との思い出の写真。

一緒に暮らし始めた頃、出かけていく私をふざけて撮っていた彼。

だから私もずっと待って帰ってきた彼を激写したんだ。


-“ただいま”私帰ってきたよ。“おかえり”って言って。声を聞かせて。-

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