第16話

なぜ私が姿は違くても戻ってこれたのか分からなかったけど、少しだけ分かった気がする。

この与えられた奇跡を無駄にしてはダメなのだ。


『アト二日…』


私の耳にあの声変わり聞こえてくる。

そう、私の奇跡はあと残りわずかで終わってしまう。

でももう私の中でその先の選択は決まっていた。


帰り道私と彼は賑わう商店街を歩いた。

こうやっているとまるでデートしているみたいで何だか嬉しい。

そんな風に思ってるのはきっと私だけなんだろうな。

その時、ふと彼の足が止まる。

彼の目線の先にはサングラスをかけ、レザージャケットを羽織った女性がトランクを広げて座り込んでいた。

どうやらアクセやら小物を路上販売しているらしい。

彼はトランクの前でしゃがんで、何やら手にとって見ているようだ。

店の女性に景気のいい声で安くすると言われ、彼は嬉しそうに微笑んで手にとっていたものを購入する。

私からは死角になっていて何を買ったのかは見えなかった。

それから二十分ほどして彼のマンションに辿り着く。

彼は手前で私を抱き抱えジャケットの内側に入れる。

そして人がいないことを確認して足早に部屋へ戻った。

彼は真面目な人だったから、こうやってルール違反をするのはかなりの勇気がいるだろう。

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