第15話

波が容赦なく私の体を押し返し、何度も岸に打ち上げられる。

全身はもうビショビショ。

息が苦しかったけど私は進むことを止めなかった。


体が半分以上浸かり、頭だけが水面からでた状態になったその時、突然私の視界が暗くなる。

同時に感じた私の上に覆い被さる何かの重みと温もり。

驚いて状況が読めないまま、私は海から引き上げられ視界には再び広大な海が広がる。

ただ先程と違うのは私の体を力強く抱き締めている腕があること。

振り返ると彼の必死な顔があった。

そして私の無事を確認してホッとした表情に変わる。

私を抱き締めたまま微笑む彼は“帰ろう”と言ってくれているようだ。

彼の額には朝日に反射して光る汗が見える。

どうして…?

そんな汗だくになって私を探してくれたの?

私にはそんな資格ないのに…。

彼は優しく私の頭を撫でてくれた。

側にいてほしいと一生懸命口を動かす。

その瞳は少し潤んでるように見えた。

“鈴花”を失った彼は声を失ってしまった。

未来も閉ざしかけてる。

でも知ってか知らずか猫になった私を必要としてくれて、少しは未来を生きたいと思ってくれていると考えていいの?

彼は私を必要としてくれている。

私はやっぱりバカだな。

彼の前でもう一度死のうとするなんて…。

私も彼の側にいたい。

彼を助けたい。

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