第11話
その時、玄関のチャイムが鳴る。
彼は少しだけ間を置いてから、私をゆっくり降ろして玄関に向かう。
行かないでほしい…。
なぜなら、誰が来たのか私には想像ができてしまったから。
相手はきっと…。
「おはよう、聡一君。」
ドアが開く音の後に聞こえてきた望実の声。
彼が戸惑った顔を見せると、望実は悲しげに笑いながら部屋の中に入ってくる。
「そんなに困った顔しないでよ。ご飯持ってきた。」
望実はキッチンに向かったが、手をつけないまま置いてあるお弁当箱を見つめて立ち止まる。
きっと昨日の持ってきたものだろう。
その時の表情は見えなかったけど、きっと望実は涙をこらえている。
それでも言葉を飲み込んで、古いお弁当箱を鞄の中にしまうと新しく持ってきたお弁当のフタを開けてテーブルに乗せる。
散らばった写真を見た時も何か言いたげだったが、何も言わず片付けようとする望実。
その時、彼は勢いよく駆けつけて望実から写真を奪い取り、テーブルの上の写真もかき集める。
その勢いでお弁当は床に落ちてしまった。
次の瞬間、望実が彼から写真を叩いて部屋に私達の思い出が舞い散る。
「やめて!鈴花は死んだんだよ!もういないの。現実を受け入れて…私を見てよ…」
彼の背中にすがり付き涙声で訴える望実。
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