第9話

私はいつもこの腕の中に包まれるのが大好きで、今は懐かしい温もり。

もう私が私としてこの腕に抱かれることはない。

いつかこの腕は他の誰かのものになるんだ。

そう考えるとすごく寂しい。

私は涙がこぼれ出て、その腕に身を寄せる。

彼は優しく私の頭を撫でてくれた。

すると、今はもう一度彼に会えたことを幸せに感じて、少しの間悲しみを忘れることができた。

疲れと安心感からか、私は急な眠気に襲われてそのまま眠ってしまった。

夢の中で見た彼は私に笑いかけてくれていたが、どこか寂しそう。

彼が何か言っているのに私には聞こえない。

どうして…?

私も話したいことがあるのに、やっぱり彼の声が思い出せないよ。

お願い…声を聞かせて…。

私は無意識にまた涙を流していた。

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