第5話

既に物理の教師になっていた彼はどうしても仕事を休めず、私が直接彼のいるところに向かう途中だったのだけど、考えてみれば彼が来てたら彼も事故にあっていたのだ。

私だけでよかった。

そう思うと私の気持ちも少しだけ軽くなる。


しかし葬儀場のどこを探しても彼の姿が見えない。

やがて葬儀も終わり出棺の時間がやってきた。

でも遺体がないため火葬場には行かず、形だけの出棺だった。

次々と人が帰っていくなかとうとう彼は現れなかった。

どうして…?

するとある声が聞こえてきた。


「聡一君大丈夫かな…?」


小学校からの幼馴染みである望実だった。

彼女とは高校までずっと一緒で一番の親友。

望実も教師を目指していて彼と同じ大学に通っていた。

彼が卒業するまではよく待ち合わせをして3人で遊びに行ったりしたものだ。


「鈴花が事故にあったって聞いてからすごくショックをうけていたもんね。」


別の高校の友人が言う。


「鈴花が死んだことを認められなくて、ずっと探し回って見てられない…。」


涙を流しながら話す望実の言葉で、ようやく彼がここに来ない理由が分かった。

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