第3話
「私は彼の声をもう一度聞きたい。そして約束を果たしたい。」
私は謎の声に向かって叫んだ。
『契約は成立した。さぁ、お前の願いを叶えよ。』
すると謎の声と共に眩しい光が広がった。
きづくと私はある葬儀場の前に立っていた。
うっすらと灯る案内灯を下げた人に誘導されて次々と参列者が入っていく。
故人の名前は“佐伯鈴花”。
私の名前。
まさか自分の葬式を見ることになるとは思いもしなかったが、改めて自分の死を目の当たりにすると、やはりショックが大きい。
そして窓ガラスに写る自分を見て初めて自分が人でないことを知った。
身体中ふわふわの白い毛に包まれ、尖った耳が二つ。
口からヒゲを生やし、尻尾までついていた。
そう、私は猫の姿になっていたのだ。
確かに、あの声は甦るとき“以前とは違う姿”とは言っていたけど、猫になるとは予想外。
でもまたこの世に戻ることができた。
戸惑っている場合ではない。
早く彼に会いたい。
私は参列者に紛れて、こっそり中に入り込む。
そして彼を探した。
始めは四つ足に慣れなかったけど、次第にコツを掴み自然に走れるようになる。
そこでは昔の同級生や幼馴染み、職場の同僚、上司の顔もあった。
みんなが私の死を悲しんでくれている。
中でも両親の泣き崩れる姿は見ていられなかった。
ごめんなさい…。
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