第17話

「…っ…人体模型じゃん」



「うん、そうなんだけど…あれ」



愁は、人体模型の足元にある箱を指差す。


箱の中には、卒業証書の筒が入っていた。



「あっ!卒業証書!」



人体模型に近づき、卒業証書を取りに行く。



…動いたりしないよね?



そーっと近づく。

そーっと取る。



うん、何ともないみたい。



振り向いて、愁の元へ行こうとすると、背後からガシッと肩を掴まれた。



僕は振り返らず、「いやぁぁ」と叫んで愁に飛び付いた。



「おっと…」



愁に抱っこされる形になる。



「今日は、元気だね」



愁は、よしよしと僕の頭を撫でる。



「うるさい。早く行って」



愁の肩に顔を埋めてゴールを指差した。



「え、降りる気無いじゃん」



そう言って、愁はゴールへ歩き出す。



「そろそろゴールですけど」



「……」



僕は愁の言葉を無視して、抱きつく手に力を込めた。



「はいはい、このままゴールしまーす」



ガラガラと扉を開ける音がして、目の前が明るくなる。



すると、「きゃぁぁ!」という黄色い声が聞こえてきた。



「…空、注目集めてるけど」



「え?」



愁の肩から顔をあげて、振り返ると、カメラを持った生徒たちに囲まれていた。



「なんで抱っこしてるんですか!?」

「中で何があったんですか!?」



生徒から、質問攻め。



「え~?何も無かったよ?」



愁は笑って、答える。



「ね?空」



そう言うと、僕の頬にちゅっとキスをした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る