第16話

「追いかけて来てるぅぅ…!」



愁の腕をグイグイ引っ張る。



「え?うわ、ほんとだ!」



「やべぇ、来てる」と、笑う愁。



いや、笑ってる場合じゃないし!


追いかけて来るなんて反則だし!



もう、泣きそう。



その時、ふわっと体が持ち上がった。

足が床から離れる。



「なんで泣いてんの」



愁にお姫様抱っこされる。



「うぅ…怖すぎる…」



僕は、半泣きで言った。



「逃げればいいんでしょ」



愁は、僕を抱えたまま走る。


廊下を走り終えると、もう男子生徒は追って来ていなかった。



愁の腕から降りて、自分で歩く。



「…それにしても、広くない?」



結構、走ってたよね?

お化け屋敷、広すぎる。



「あー、ここ、多目的ホール使ってるからじゃん?」



「え、多目的ホールだった?」



海のことを気にしすぎて、全然気付かなかった。



多目的ホールは、色々と使うので普通の教室の2.5倍くらいの広さがある。


まあ、生徒会専用の遊戯室と同じくらい。



ゴールまで遠いじゃん…



「ねぇ、卒業証書あった?」



「んー、なかったんじゃん?」




…走ることに夢中で見てなかった…




きっと、愁も見てない。



「まあ、大丈夫でしょ」



愁は、気にせず歩いていく。



何度か脅かされて、その度に叫んで愁にくっついて…を繰り返す。



喉が痛くなりそう。



「空!みてみて」



愁が指を差す方を見ると、生物室を再現したのか人体模型が置いてあった。

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