第15話

「なってないし!」



バッと愁から離れたとき、ぐにゅ…とした何かを踏んだ。



「ひっ…」



恐る恐る下を向くと、赤黒いものが落ちていた。



「わぁ!!」



思わず、大きな声が出る。



「なに!?」



僕の声に愁が驚く。



血…では、ないよね?

塊だもん。そんなわけないよね。







え、じゃあ、なに…?



暗闇の中で、その塊をじっと見ていると、誰かの声が聞こえてきた。



「……ぃ……」



すごく小さい声。



「え、なになに!?」



僕は、愁の腕にぎゅっと抱きつく。


こわい、こわい、こわい。



「ちょっ、空、いたい」



愁が痛がっているけど、それどころじゃない。



「…ぃ……痛い…」



と、不気味な声が聞こえてくる。



愁…じゃないよね?



「……痛い……い……かなきゃ……」



ズルズル…と布が擦れる音が聞こえてくる。


赤黒い塊の奥から、血で染まったYシャツを着た男子生徒が這って出てきた。



「…僕の…心臓……踏まないでよ…」



血まみれの男子生徒は、赤黒い塊を握りしめると顔を上げた。



その顔は、目が無くて、ぐっちゃぐちゃ。

よく見ると、頭もぐちゃぐちゃで何か飛び出していた。



「ぎゃぁぁぁぁあ!!!」



あまりの恐怖に、愁の腕を引っ張ってダッシュする。



「おぉ、すごい。脳ミソ出ちゃってるよ」



「特殊メイクってすごいな」と、のんきなことを言いながらついてくる愁。



「空、心臓踏んじゃってるし」



愁は、ふふっと笑いを堪えている。



「ちゃんと走ってよ!」



そう言って振り返ると、愁の後ろからその男子生徒がふらふらと追いかけて来ていた。

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