第14話

「海…!」



すぐに電話に出る。



「もしもし…!」



「今、どこ?」



声がいつもより少し低い。


怒っているときの声。



「お化け屋敷…」



「あ!空!本当のこと言うなよ!」



隣で愁が「切れ!今すぐ!!」と騒いでいる。



「あの…ね、海…」



「いいよ、どうせ愁に乗せられたんでしょ」



…やっぱり、なんでもわかってる。



「1時間だけね?楽しんでおいで」



あ、いつもの海の声。



「うん…!」



「でも、帰ってきたら倍、働いてね?」



意地悪な海の声。

きっと電話の向こうで、ニヤリ…って怪しい顔で笑ってる。



「う、うん…」



素直に帰れば良かったかな…



そんなことを思いながら、順番が来たので、お化け屋敷に入る。



「空様!愁様!いらっしゃいませ…!」



受付の子にお化け屋敷の説明をしてもらう。



この学校が舞台で、卒業間近に交通事故で亡くなった生徒が、卒業証書が欲しくて…幽霊になって出てくる…


その霊を鎮めるために、中に入って、どこかに隠されている卒業証書を探してくる…というお化け屋敷らしい。



「へぇ、ちゃんとしてるなぁ…」



愁は、中に入るとお化け屋敷のセットを見て言った。



確かに、すごくリアルに再現されている。

…気味の悪い学校が


廃れた教室や廊下。



「本当に出そうだね…」



ちょっと怖くなって、愁に近づく。



「なぁに、空くん、怖くなっちゃった?」



愁がバカにしたように言う。

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