第67話

「暁と考えたんだよ」



「暁と?」



「個人のイメージ聞いて、それから合う衣装や設定を考えたの」



「へぇ~…」



反対側のソファーの端で寝転がっている暁を見た。

近藤のことでまだ拗ねている。



「すごいじゃん」



小さい声で言った。

まあ、聞こえていないだろうけど。



「この衣装作りと部屋の飾り付けをすればいいの?」



スケッチブックを指差して言う。



「ううん、そっちは全部、業者がやってくれるよ」




「え、業者?」



業者なんて雇うの?高校の文化祭で? 



「もちろん、プロに頼むよ」



あははと笑う海。


はぁ、金持ちはやることが違うわ



「ん?じゃあ、俺は何を手伝うの?」



「んー?それは、もう少ししたらね?」



「え、なんで教えてくれないの?」と聞こうとした時、近付いてくる靴音が聞こえた。



「…サボってんじゃねーよ、これ追加」



ドサッと大量の書類が目の前に置かれる。



いつの間にか、手が止まっていた。



「えぇー…」



とりあえず、大量の書類は明日にして、寮へ帰ることにした。






暁を背負って寮の部屋の鍵を開ける。



拗ねたまま寝てしまった暁を背負って連れて帰ってきた。



空が「愁に任せれば良いよ」と言ってくれたが、暁くらい背負える。


持ち上げて背中に乗せるのは原野がやったけど…



少し前まで汚かったが、この前一緒に片付けたので綺麗になった暁の部屋に連れていく。



ベッドに暁を下ろそうとした時、少し上過ぎて暁の頭を壁にぶつけてしまった。


ゴンッという鈍い音が響いた。



「あっ、ごめん…」



なんとかベッドに寝かせた暁の頭を撫でる。



ボサボサの黒髪のかつらを取り、暁の赤い髪を触ると「ん…」と気持ち良さそうに寝返りをした。



暁の顔が見えなくなる。

赤い髪を見ていると、暁が赤い髪だったことを知った日を思い出す。


のぼせて倒れた日のこと。



…思い出すと笑えてくる。



「浮気なんてしないよ…」



赤い髪を撫でた後、寝ている暁の額にキスをした。



「…おやすみ」



誰も見ていないと分かっているのに、急に恥ずかしくなって部屋から小走りで出た。

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