第31話

朝6時に目が覚める。


何か夢を見たような気がするけど、覚えていない。



相変わらず脇腹は痛い。


右足が使えないんじゃ、一人で皐月を守りきれない。


朝だからか、考えがまとまらないまま出された食事を一口食べ、医師の診察を待った。


午前11時ー…



「痛いだろうけど、術後良好。つぎ、胸の音聴くよ」



そう言った医師の手が、少し首の近くにきただけだった。触られたわけでもないのに、息が詰まった。



首を絞められた時のことを、思い出す。遠い昔に溺れた時の記憶も、思い出す。



息が、できない。



「ー…君!理玖君!ー…過呼吸だ、ゆっくり深呼吸して、理玖くん!」




「ー…理玖⁉︎」



夏輝の声がする。


見舞いにでも、来てくれたのだろうか。




「理玖、落ち着け、大丈夫、大丈夫だから」



夏輝が抱きしめてくれるのが分かる。


何で医師の言葉だとダメだったのに、夏輝だったら大丈夫なんだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る