第11話

ふと、星の噴水の機械を見やると星屑を吐き出していた噴水は止まっており、たくさんいたはずの

星を撒く人々も居なくなっていた。


小高い丘のステージでタクトも夜空を見上げている。


「タクト、あの人たちは…?」

夜空を見上げているタクトは駆け寄った私に気が付き、

「そろそろ夜が明けるから、夢がさめる。それぞれの世界に還ったよ。」と笑顔で応える。

「理子こそ、会いたかった人に会えてよかったね。」

タクトはこの展開が分かっていたように投げかけた。

その言葉に無条件で頷くことができた。


あんなにたくさん人がいたこの月の世界が私とタクトと叔父さんの3人になった。

…しばらく3人で空を眺めていた。


不意にタクトは

「あの星空の星屑たち。今でこそキレイに輝いているけれども、

原料は悲しみなんだよ。」


「悲しみ…?」


そう、と頷くタクト。


「この世に生きていれば楽しいこと、嬉しいことについてくるのが悲しみ。もしかしたら悲しみの方が多い人生かもしれない。クロウが世界中の子どもたちに笑顔を配っていると同時にその子どもたちや大人達が抱えている悲しみと辛さを引き取ってくる。そしてその悲しみを眠らせるとこの星屑が、できるんだ。

悲しみは絶対いつか輝くんだ。理子の今の悲しみも絶対、希望に変わる。ね、クロウ。」


タクトの目線は叔父さんを向けられ、叔父さんは優しく頷く。



タクトにはいろいろ聞きたいことがたくさんありすぎる。そしてタクト自身も誰なのか問いただしたい。


けど、タクトに会わなかったら叔父さんにも会えなかった。 

優しい笑顔で微笑むタクトに思わず抱きついてしまった。


「ちょ、ちょっとぉ?!理子ぉ?!」


「ありがとう、タクト…。ホントに、ここに連れてきてくれて、叔父さんに会わせてくれてありがとう!」


不意に私に抱きつかれて慌てふためくタクトを見て叔父さんが笑う。


空に輝いている星達もそれを見て笑っているようにキラキラと、輝き瞬いていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る