悲しみの化石
第10話
どれくらい泣いていただろう。
多分10年分、心配していただけの涙がでたと思う。
叔父さんは楽しく星を撒く人々から少し離れたところまで私を連れ、まだ泣きじゃくる私の背中を優しく撫で、
「ごめんな、理子。そこまで心配かけてしまっていたなんて。」
{ずっと、心配してた。
目の前で忽然と消えてしまったから。
父や母からはもう、叔父さんはもういない、死んだと思えと言われても
いつか会えるってずっと信じてた。。}
言葉にならない思いが心から生まれ、喉の奥で嗚咽に邪魔されて言葉にならず吐き出せずにどんどん溜まっていく。。
けれど不思議に私の思いは心からスッと消えていく。
まるで叔父さんが撫でてくれる手が溢れかえってくる思いと嗚咽を吸い取ってくれているかのようだ。
叔父さんはうんうん、と頷きながら私の背中をさする。
少し落ち着いた頃、
「理子。確かにあの時理子を哀しませてしまったのだけど、ボクはね、あの日からボクの夢を叶えることができたんだ。…聞いてくれるかい?」
とポツリと語りだした。
『…
あの日、車がボクに突っ込んできた瞬間、ボク自身もどうなったかわからなかった。
気が付いたら、ボクは真っ白な空間に一つだけある真っ白なベッドに寝そべっていた。
目は開くのに、身体は全く動かなかったから、あぁ。ボクもとうとう夢半ばにしてこの世界に来てしまったのかと思った。
すると、真っ白な空間から一つドアが現れて、扉から一人の人物が入ってきて寝そべったままのボクを見下ろした。
その人の曰く、ボクの夢を叶えてあげる代わりにその人の弟子になること、そしてボクはこの世の世界の人間とは縁を切ることを言い渡された。
ボクは考えたけども、
ボクの夢。
世界中…いや、悲しみの世界にいる子ども達に笑顔を届けたいという夢を叶うのであればボクは死んでも良いって思った。
その瞬間、ボクはボクを助けてくれた人のもとで修行して『魔法』を手に入れて、世界中の子どもたちに笑顔を届けるために飛び回っているんだ。
この世の人間と縁を切ることが条件なのはもう元の世界には帰ることが出来ないから。魔法を習得するにはその代価が必要なんだ。』
「じゃぁ、叔父さんとはこれっきりもう、会えないの…?」
『それが分からない。本当なら今のこの状況が有り得ないんだよ。
ボクも不思議なんだ。
この世の人間にはもう会えないはずなのに何故、理子に会えたのか。。
タクトが選んだ『星を運ぶ子』が何故理子なのか。
でも、今はそんなことどうでもいい。ボクは今、ホントに嬉しいんだよ。
理子。ホントにキレイに純粋に育ったね…。』
叔父さんのピエロのメイクがだんだん薄くなり消えていく。
そして、あのときのままの叔父さんの素顔になった。
「叔父さん…あの時のまんまだ。」
『この世の人間じゃないからね。』
目を細めて軽く笑う叔父さん。
…この世の人間でない。
少し、心が小さな針でつつかれたような気持ちになった。
叔父さんにはいろいろと聞きたいことがあったし、もっと問いつめたいこともあった。けれど
この、目を細めて笑う叔父さんの笑顔を見ていると色んなモヤモヤがスッと消えていく気持ちになった。
叔父さんの『魔法』なのだろうか?
例え夢でも幻でもいい。
大好きだったあのときのままの叔父さんに会えたのだから。
そう、心から思えると自然に笑みがこぼれた。
『あぁ、やっと笑った。やっぱり理子は笑顔が似合う。…空を見上げてごらん…!』
叔父さんに促されて夜空を見上げた。
わぁ…と歓声を上げる。
星を撒く人々のおかげで暗かった夜空が正に満天の星達が輝くとっても綺麗な夜空になった。
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