第7話

食べていないせいで貧血になっているのだろう。まずはそれを改善しなければいけない。


「それにほしいのは、ちじゃなくて、みちるさん」

「え?」

「みちるさんに、げんきになってほしい」


 優しい言葉に私は目が潤むのが分かった。

 純粋な幼い言葉でかけられる優しさがこんなにも染みるだなんて思いもしなかった。


「奏歌くん……」


 感動して奏歌くんの小さく湿った手を握り締めている間に、海香と美歌さんの間で私と奏歌くんのお試し期間の取り決めが始まっていた。


「姉さん、かなくんはこんなに小さいんだよ」

「運命のひとに出会えるなんて奇跡みたいなものなんだから、絶対に手放しちゃダメ。奏歌を海瑠さんのうちにお休みのときに預かってもらいましょう」

「姉さん」

「海瑠は家事ができないだけど」

「お弁当とお惣菜を持たせます。作るのは安彦だけど」

「ちょっと、姉さん!」


 篠田さんは反対しているが、話は進んでいく。常識派の篠田さんには申し訳なかったが、私も奏歌くんのことを忘れるのは嫌だったのでその話に乗ることにした。

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