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フルートを吹かない日があるのは珍しいことではないのでそのことに関しては全然気にしない。



それよりもさっき彼が「今日も」って言ったことの方が気になる。



もしかして昨日、吹いていたの聴かれてた?




趣味で毎日の様に吹いているとは言え人様に見せるようなものではないのに。



恥ずかしい。




そんな私の羞恥心なんて知らずに




「よかったら隣どうぞ」





彼は手で隣に座ることを私に勧める。



それに少し躊躇ったが余りにも無垢な笑顔を向けるので座らせてもらった。



そして、彼は私に訊く。


「学生さん?」


「はい」


「この近くの学校に行ってるの?」


「いえ、二駅先の大学です」


「二駅先って言ったら確か音大くらいしかなかったよね。あと短大とか専門学校があったと思うけど」


「えっと、音大に、行っています」


「やっぱりそうなんだ」


「……はい」




彼の言葉に俯きながら答える。



怪しいけど別に悪い人でもなさそうだし隠す必要もないから答えられる。


だけどやっぱり気になる。




貴方は一体、何者ですか。




本当に不思議なんですけど。


田舎でも着物を着ている男の人なんて、そうそう見ないよ。



思っているとを私の横に置いてあるフルートケースをちらっと見て彼がまた、私に訊いた。




「いつもここで吹いてるの?」


「そうですね。時間があるときはここで吹いています」


「そうなんだ」




ここ、気持ちいいもんね、と彼は一言付け加え周りを見回す。


同じことを思う人はやっぱりいるんだ。



少し、嬉しくなった。





「それより着物を着た男が女子大生にこんなに質問してるなんて、僕、相当怪しい者だよね。一応言うけど決して怪しい者じゃないからね」



苦笑いしながら彼は言った。

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