長男と初めまして
第47話
休日の昼下がり。
佐々木家長男はいきつけのカフェの一角でレポートに追われていた。
「コーヒーのお替りいかがですか?」
「あ、はい。お願いします…」
爽やかな店員が長男の空のコーヒーカップを取りコーヒーを注ぐ。
その工程を長男はガン見している。
それはもう爽やかイケメン店員に穴が開くのかというほどに。
「あ、あの、僕に何かありました?」
気まずそうな笑顔を見せる店員に長男は、はっと正気を戻す。
「すみません。何もないです」
「そうですか。何かやらかしたのかと思っちゃいました」
「はは」
「よくいらしてますよね」
「そうですね。ここのコーヒー美味しいし、お店の雰囲気も好きだから」
「ありがとうございます。店長に伝えときます」
そう言って店員はカップをそっと置いた。
「お兄さんは大学生ですか?」
「そうですよ」
「大学生って憧れますね。あ、僕、まだ高校なんですけど」
「へえ。高校生なんだ」
「課題頑張ってくださいね」
「はは、ありがとう」
長男のその言葉を訊いて店員は立ち去ろうとすると
「あ、ねえ、ちょっと聞いてもいいかな」
長男が引き留めた。
「はい。何でしょう」
「ここ、学生ってあと何人くらい働いてるの?」
「え?3人ですかね。高校生は僕だけですけど…」
「そうなんだ…ごめんね、引き留めて」
「いえ。では、ごゆっくり」
そう言って彼は仕事へ戻っていった。
長男もレポートをしようと再度PCへ目を向けるがやはりはかどらない。
それもそうだろう。
彼が次女へ想いを伝えた男だと分かってしまったのだから。
(やっぱりあいつか~)
また頭を抱える。
実は長男は一度次女とお店に訪れたが、その時は彼が休みだったらしく不在だった。
そもそも行きつけだったという事もあり、その後、何度か来店しては彼を見かけてはいたらしい。
(毎回思うけど爽やかすぎて胡散臭くないか?大丈夫なのか?)
悶々としていれば、雅弥君、と声がかかった。
「あ゛?……奏太朗か」
顔を上げれば下双子の幼馴染がカップを持って立っていた。
「あ゛?って怖いな。レポートしてるの?」
「そう。全く進んでないけど」
「雅弥君の分野って難しくて全然分かんないや」
ちらっとPC画面を見てから長男の前に座った。
「あ、座っちゃったけど俺帰った方がいいかな?」
「別にいいよ」
よかった、と安心している幼馴染は本を取り出した。
「あれ、奏太朗だ。いらっしゃいませ」
「裕翔、いたんだ」
「え、お兄さんと知り合いなの?」
「うん。まあ…」
「…奏太朗、友達だったのか?」
「あ、いや、まあ、最近友達になったというかなんというか…」
歯切れ悪く答える幼馴染だが仕方がない。
そして、長男の顔がどんどん険しくなっていく。
(雅弥君、絶対気づいてるじゃん。純香も雅弥君にだけ言ったって言ってたしな)
「奏太朗、お兄さんとどういう繋がりなの。気になる」
「裕翔は仕事があるだろ。戻りなよ」
「俺、今休憩中」
「まじか」
「奏太朗は俺の妹の幼馴染なんだよ」
「あ、奏太朗の幼馴染のお兄さんなんですね…………え!?」
長男の言葉を訊いて理解力のある彼は直ぐに分かったのだろう。
自分の想い人の兄が目の前にいるという事を。
それも黒い笑みを浮かべているということまでも。
「雅弥君、純香の事になると頑固親父みたいになるのやめた方がいいよ」
「誰が頑固親父だよ。優しいお兄ちゃんでしょ」
「優しいのは純香の前でだけね」
「奏太朗も言うようになったな」
「あ、裕翔、雅弥君は裕翔が純香に告白したこと知ってるんだよ」
「は!?え!?なんで!?!?」
「純香が一番に相談したのがこの人だから」
「~~~~!!!!」
「妹がお世話になってます」
「あの!ま、まだ妹さんとはお付き合いはしておりません!」
「はは、知ってる。というかまだって何。付き合う気満々じゃん」
「あ、えっと、す、すみません!」
「裕翔、謝らなくてもいいし、付き合う希望だってまだまだあるから」
「奏太朗はどういう立ち位置なんだよ」
「頑固親父の肩だけは持ちたくない」
「だから誰が頑固だっつってんだよ」
「昔の雅弥君に戻ってるよ」
「うっせえ」
「あ、純香呼ぶ?」
「「呼ばなくていい!!」」
幼馴染の提案に長男と青年が同時に否定し、長男は不機嫌そうに頬杖をつき、青年は緊張で表情筋が固まっている。
「ははっ、息ぴったりじゃん」
そして、幼馴染だけが楽しそうに笑っていた。
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