長女を尾行する高校生組

第48話

ある平日の放課後、珍しく佐々木家高校生組が揃って下校していた。




「ねえ、俺、一人で先に帰りたいんだけど」


「どうせ帰る家は同じなんだから一緒に帰ろうぜ」


「まっすぐ帰るならいいけど」


「えー!一緒に帰るなんてなかなかないんだからちょっと寄り道しようよ!」


「嫌だよ」


「即答なんてお姉ちゃん悲しい」


「因みにどこ行こうとしてんだよ」


「隣駅に出来たカフェ!モンブランが超絶美味しそうなの!」


「隣駅まで行くなんて絶対嫌だ。潤君と一緒に行ってきて」


「そう言わずに行こうよ~!」




次女が三男の腕を引っ張りながら駄々をこねているが、前を歩いている次男は迷わず帰路についている。


すると、急に次男が立ち止まった。




「潤君、どうしたの?」




不思議に思った三男は次男に問うと、人差し指を口の前で立てて静かにと言うジェスチャーを二人に送り、物陰に隠れた。




「何よ。やばい人でもいたの?」


「すっげえやばい人がいた。あれ見て」




そう言われて二人は数十メートル先のカフェの出入り口にいる人を物陰から見た。




「お姉だ」


「隣にいる人誰だろう」


「お姉が男の人と二人でいるのなんて珍しいね」


「……」


「……」


「…もしかして、彼氏!?」


「しっ!静かにしろ!バレるだろ!」


「あ、ごめん」


「雅君は知ってるのかな…」


「お兄が知ってたらとんでもないことになってるだろ」


「確かに、お兄ってお姉の彼氏には厳しいもんね…」


「でも、清ちゃんももう大人だよ?高校生の頃とは違うんだし…」


「え、ってことはお兄にも言えない秘密のお付き合いってこと!?きゃー!お姉やるぅ!」


「だからお前は声がでかいんだよ!」


「あ、二人が移動するみたいだよ」


「追うぞ」




三人は長女の行方が知りたくなり、ノリノリで尾行を始めた。




「相手の人、そんなに目立つって感じじゃないね」


「うーん。お姉の相手にしては意外だな」


「でも、優しそうだよ」




コソコソ隠れながら相手の男について考察し始めた三人はある意味目立っている。


そして、長女と男性はある建物には入って行った。




「デパートでデート?大人ってすごいね…」


「もしかして相手、金持ちなのか?」


「清ちゃんがお金目当てで付き合うなんて考えられないんだけど」


「そうだよ!早く追いかけよ!」


「まだ追いかけるの?もうよくない?」


「ノリノリだったくせに何言ってんだよ!ここまで来たら引き返せねえ!」


「そうだよ!誠弥、行こう!」




少し罪悪感が生まれていた三男の希望も虚しく、二人に無理矢理連れられ、デパートに入った長女を探す。




「どこだろう~。全然分かんないね」


「そうだな。ここ広いから手分けした方が早そう」


「二人とも、尾行ってこと忘れてるよね」


「はっ!そうだった!バレちゃいけないんだった!」




三男が次女のポンコツ具合を改めて目の当たりにしていると、一枚のポスターが次男の目に入った。




「……なあ、これ、お姉じゃね?」




そのポスターには、青く澄んだ空を気持ちよさそうに見上げている綺麗な横顔の女性、佐々木家では見慣れている長女の横顔が写っていた。




「え、本当だ。綺麗すぎて気づかなかった…」


「ここで開かれてる写真展のポスターだね」


「という事は、これを見に来たって事か?」




そう三人が謎を解いたその時、




「あんた達、何してんの」




後ろから聞き覚えのある声がした。




「お姉!」


「お姉こそ何してんだよ!」


「私が質問してるのよ。あんた達が揃ってこんなところにいるなんて可笑しいのよ」


「それは、その…」


「もしかしてずっとつけてた?」


「「「……」」」


「はーーーー」




黙り込んでしまった三人に長女は深いため息をついた。




「佐々木さん。そちらは?」


「すみません。私の弟と妹です」


「あ、兄弟さんだったんだね」




黒縁メガネをかけた写真家が三人に笑いかければ、三人は小さく会釈をした。




「よかったら個展見て行ってほしいな。君達のお姉さんがモデルをしてくれたんだ」


「恭介さん、この子達には見せなくていいです!」


「あ、そうだよね、僕の写真じゃ恥ずかしいよね…」


「いや、そういうわけじゃなくて!」


(((お姉(清ちゃん)がたじろいでいる)))




珍しい光景を目の当たりにしている三人は余計に男性の事が気になるが、ここで直接関係性を問えば家に帰った時が恐ろしいという事を三人は分かっているので黙っている。


かと言って、このまま写真展に付いて行くこともまたリスキーだ。




「すみません。写真展行ってみたかったんですが、俺達、この後行くところあるので」




自分たちの命の危険を察知し、次男が男性にそう告げた。




「あ、そうだったんだ。無理に誘ってしまってごめんね」


「いえ、このポスター見れただけでもよかったです」


「はは、ありがとう」


「じゃあ、俺達は失礼します」




次男がそう告げると三男は会釈を、次女はばいばーいと手を振って長女達の元を後にした。


そして、長女は、次男があんな大人な対応が取れるのかとひとり驚いていた。

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佐々木さんちのご兄弟 昊野宇美 @sea_of_sky

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