佐々木家の節分

第45話

節分の佐々木家はいつも以上に賑やかだ。




「お姉!巻寿司の具を切れました!」


「ありがとう。酢飯もできたから後は巻くだけね」


「巻くのは任せて!」


「そうね。ロールケーキも天才的に綺麗に巻けてるから、純香に任せるわ」




長女に褒められ頼られることが嬉しくて次女は満面の笑みである。




「今年の鬼役は誰か決まったの?」




長女はカウンターキッチンからリビングに向かって佐々木家男子達に問う。




「ジャンケンの結果、俺に決まったよ」


「お兄の鬼久々だなー!」


「雅君逃げるのプロだからなかなか当てられないんだよね」


「皆がまあまあ本気で投げてくるから本気で逃げてるだけだよ」


「父さんはいつも本気で投げて来いって言ってたからつい癖で…」


「しかもあの人俺らに当てられて喜んでるしな」


「二人ともあの人の言う事は5割聞かなくてもいい」


「雅君って何気に父さんには辛辣だよね」




三人が実父について話していれば女子二人はせっせと夕飯を作る。




「そう言えば豆は買ってきてるの?」


「買ってきているに決まっている!!」




長女の問いに次男が自信満々に煎り大豆が入って袋を見せびらかした。




「え、潤弥そんなに買ってきたのか?」


「食べるように一袋だろ、豆まき用に4袋!」


「どれだけ豆まく気だよ!」


「やっぱ厄除けって大事じゃん?」




そう言って次男は皆の食べる豆を用意し始める。




「恵方巻出来たよ~!食べよ~!」




次女が人数分の恵方巻を皿に乗せて運ぶ。


佐々木家の恵方巻は少し短めだ。


一気に食べられるようにという長女のちょっとした気遣いである。




「これを食べたら豆まきよ。楽しみね。雅弥が鬼なんて何年ぶりかしら」


「清ちゃんが生き生きしている…」


「毎年の事だけど、お姉が一番怖い…めっちゃ痛い…」


「それは禁句だ…俺ってだけでもいつもより本気で投げてくるのに更に威力が増してしまうだろ…」


「何コソコソ話してんのよ。早く食べてしまいなさい」


「黙って食べないとね!」




5人は黙々と恵方巻を食べる。実にシュールである。




「やっと食べ終わったー!」


「潤君今年も変顔してきたでしょ」


「当たり前だろ。食べてる間暇なんだから」


「そういうの良くないと思う。御利益なさそう」


「確かに…!」




次女の言葉に戦慄が走る次男に三男は呆れている。




「さあ、今日のメインイベントよ!雅弥、さっさと準備してきなさい!」


「はいはい」




長男は長女の言う通り準備に取り掛かる。


準備と言っても鬼の仮面を被って庭に出るだけなのだが。




「よーし、準備出来たぞー」


「潤弥、豆頂戴」


「ほい。一人一袋分あるからな!」


「じゃあ、お兄いくよー」




次女の声の後、4人は豆を掴み外に向かって、




「「「「鬼はー外ー!」」」」




投げた。




「痛い!!殺意込めて投げてる奴いるだろ!!」


「殺意なんて込めてないわよ」


「やっぱり清香か!」


「ごちゃごちゃうるさいわね。本気で投げないと厄なんて払えないでしょ。いつも父さんが言ってたことよ」


「そうなんだろうけど、痛いんだよ!!」


「喧嘩より痛くないでしょ。黙って私たちの豆をくらいなさい」




長女はそう言ってまた長男に向かって投げる。



それを見ていた3人は真の鬼は長女なのではと思い、長男に哀れの目を向けながら長女より遥かに弱い力で豆を投げるのであった。

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