長女の頼み事
第43話
美味しそうなご飯が並ぶ食卓を囲む佐々木家兄弟たち。
家族団らん中に長女が4人に呼びかけた。
「明日、夕方から暇な人いない?」
その問いに4人は各々スケジュールを脳内で確認する。
「俺は研究室に籠る予定」
「俺も明日は奏太朗と遊ぶから暇じゃないな」
「私はクラスの人たちとカラオケ!」
「俺は特にないかな」
「誠弥が暇なのね」
「どうかしたの?」
「明日からバーゲンが始まるのよ。初日に駆け込んでいいものを買わないといけないでしょ?」
「それと俺たちの予定がどう関係あるの?」
「誠弥、愚問だ。そしてご愁傷様」
お誕生日席の三男が斜め前に座る長女に問うた瞬間、長女と三男の間に座っていた長男は三男を可哀想な目で見た。
「じゃあ、誠弥、明日学校終わり駅で待ち合わせね」
「え、なんで」
「なんでって荷物持ちに決まってんでしょ。誠弥の好きな物も買ってあげるから」
「えぇ…絶対多いじゃん…」
「お姉、バーゲンに行くの!?私も行きたーい!」
「あんたは友達と約束してるじゃない」
「友達とカラオケなんていつも行ってるもん!お姉とお買い物したい!」
「駄目よ。先に約束してたんならそっちに行かないと」
「うぅ…」
次女は目の前に座る長女に言われ落ち込むが、テーブルに並んでいる唐揚げを口に運ぶと一瞬で口角を上げた。
「態々人の多い所に飛び込んでいくとか尊敬するわ」
次女の隣に座っている次男がぼそっと呟いた。
「そう言う潤弥は明日奏太朗と何すんのよ」
「特に決めてねえけど」
「じゃあ奏太朗も連れて来なさいよ。荷物持ちは多いに越したことないわ」
「俺の話聞いてた?人混みは嫌だって言ってんじゃん」
「奏太朗に訊いてみて」
「全く聞いてねえな?!」
そう言いつつも次男は幼馴染に連絡をする。
「奏太朗も来るなら私も行きたいー」
「だから純香は友達との先約があるんでしょ」
「友達とカラオケなんていつも行ってるもん!」
「いつも行ってても先約は先約じゃない」
「そうだけど、でもでも、友達だってお姉とバーゲン行くからって言ったらそっち行ってきなってなるよ!」
「ならないでしょ」
「お姉は私と行きたくないの?」
「行きたいか行きたくないかで言うと行きたいけど」
「じゃあいいじゃん!」
そう結論付けようとする次女に4人はそうじゃないだろとツッコみを入れたくなる。
しかし、言わないのは言っても無駄だと誰もが思っているからだ。
「あ、奏太朗から返事来た」
ピロンと音が鳴ったスマホを次男が見る。
「なんて?」
「……いいよだって」
「じゃあ明日はいっぱい買えるわね。奏太朗にも好きな物買ってあげないと」
「俺にも買ってくれるんだろ?」
「仕方ないわね」
「え、奏太朗はともかく誠弥と対応違いすぎねえ?」
「潤弥、俺の場合、行っても何も買ってもらえないから」
「雅弥は弟とは違うんだから当たり前でしょ」
「一応、俺も弟なんだけど」
長男は少しばかり抗議しようとするが長女が全く反応すらしてくれないので静かに唐揚げを頬張る。
「じゃあ、誠弥と潤弥と奏太朗は駅で待っててね」
長女は2人に告げるれば2人は静かに頷いた。
長女には誰も逆らえないのである。
「お兄、なんか欲しいものあるなら買ってくるよ」
「潤弥…」
「まあ、金は後で請求するけど」
「割増しで?」
「お兄、いつも可哀想だから利息なしでいいよ」
「利息なしはありがたいな。スニーカーが欲しいから潤弥のセンスで頼む」
「お兄、潤弥のセンスでいいの!?」
「心外だな。俺のセンスはいつでも抜群だろ」
「ファッションセンスは信じてるから大丈夫だよ」
長男の言葉に疑心の目を向ける次女を他所に次男は黙々と唐揚げを食べるのであった。
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