昔とは違う長男
第42話
佐々木家下三人がまだランドセルを背負っていて、上双子は中学生の頃。
その頃も兄弟は仲が良かった。
しかし、一人は今とは考えられないくらい、荒れていた。
「雅、その綺麗なお顔についた傷はどうしたんですか」
教室の自分の席で頬杖をついて座っている長男の前の席の椅子を借りて座る自称親友が訊いた。
「…喧嘩吹っ掛けられた」
長男は少し鬱陶しそうにしながらも親友に答える。
「またぁ?今度はなに。お前の顔が綺麗すぎてうざいって?」
「ちげぇ。俺の女に手を出すなって一発」
「ほぉ。で、右手が真っ赤なのは?」
「身に覚えがなさ過ぎてやり返した」
「身に覚えがないって、逆に心当たりがあり過ぎてどの女か分かんねえだけだろ」
「んなわけねえだろ」
「相手になんか言った?」
「他の男に迫る女なんてやめたら?って言った」
「心当たりあんじゃねえか」
「大抵喧嘩吹っ掛けてくる男の女はそんな奴らばっかだからな。というか男いんの知らなかったし」
「男いるって言ったら雅は相手しねえからな。まあいなくてもなかなか手出さねえけどな」
「俺ってそんなに軽そうに見えんの?」
「軽そうというか、やっぱ女のステータスなんじゃねえの?雅に相手してもらえたっていう」
その言葉を訊いて長男は至極仕様もないと思うばかりである。
「で、相手は今どうしてんの」
「知らねえ。その女に手当でもしてもらってんじゃねえの。まあ、認識できればの話だけど」
長男のその言葉を訊いて親友は爆笑する。
「ははは!!さすが雅!相手の顔見てみてえ!」
「今頃青あざでパンダにでもなってんじゃねえの?」
「パンダ!!!うけるー!」
げらげら笑う親友を長男は冷めた目で見ている。
「昨日もなんか喧嘩してたじゃん。あれは?」
「昨日?……あぁ。あれは俺だったから」
「は?」
「理由もなく俺を見かけたら喧嘩をする奴ら。迷惑すぎ。警察突き出そうかな」
「お前、男にも人気なんだな」
「どこをどう取ればそうなるんだよ。アホか」
呆れている長男を親友は気の毒そうに見る。
「そう言えば、清香が呼び出しされてたの見たぞ」
「誰に」
「上級生の女?」
「女なら大丈夫だろ」
「男だったらどうしたの」
「場合による」
「告白だったら」
「相手による」
「過保護だねえ」
「輝一みたいなやつだったら殴ってやるよ」
「どういう意味!?」
俺ってそんなに駄目?としつこく聞いてくる親友を無視して長男は窓の外を眺め、早く家に帰りたいと思うのであった。
****
時は戻り、大学3年になった上双子と高校生になった下3人はアルバムを見ていた。
「うわ、お兄が荒れていた時代の写真が出てきた」
次男があるページを見て言った。
「うわってなんだよ。失礼だな」
「この頃のお兄、毎日傷だらけだったよねー」
「俺、めっちゃ心配してたんだぞ!」
「こいつの心配なんて要らないわよ。逆に相手の人が心配だわ」
「え、そんなに?」
「そうよ。しかも雅弥の所為で私にも被害が来るし」
参ったわよとうんざりする長女の言葉にに全く心当たりがなさそうにしている長男を見て長女は更に呆れる。
「あんたが相手してた女の子達に呼び出されるわ、喧嘩してた男どもに連れ去られるわロクなこと無かったわよ」
「あ~そのことか。女の子達のことは知らないけど、男どもに連れ去られたらちゃんと助けに行ってたから許してほしい」
「助けに来るのは当たり前でしょ。来なかったら今こうして話せていないと思いなさい」
「申し訳ありませんでした」
「でもお兄って急に喧嘩しなくなったよね?なんで?」
長女と長男のやり取りを見ていた次女がアルバムをめくりながら訊いた。
「それは、喧嘩の所為で誠弥の誕生日パーティーに遅れた挙句、傷だらけの俺を見た誠弥が泣いたからね」
「俺、覚えてるよ。俺が小4の時でしょ。今まで以上に怪我の度合いが酷過ぎて大泣きした。血が垂れ流れてた」
「お父さんもお母さんもあの時は心配してたものね」
「誕生日どころじゃなくなって本当に申し訳なかった」
「えー、私覚えてなーい」
「その時の写真あるんじゃねえの」
そう言って次男が写真を探し始めた。
「まあ、もう二度と喧嘩はしてほしくないわね」
見終わったアルバムを閉じながら言う長女の言葉に長男以外が深く頷くのであった。
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