三男と初めまして

第38話

お昼休み。佐々木家三男は飲み物を買いに購買に向かっていた。




「誠弥君?」




廊下を歩いていれば、すれ違った女子生徒から声をかけられた。


声の主を見るが全く心当たりがなく彼女に問う。




「何か御用ですか?」




今回に限らず声をかけられることは珍しくはないのでいつもの様に用が何かを聞く。




「あぁ、ごめん。特に用はないんだけどやっと会えたと思って」




彼女は申し訳なさそうに笑って言う。




「はあ。そうですか」


「あ、私、純香の友達の平川真桜って言います」


「あぁ、貴方が…」




家でも話題に出た次女の親友ということが分かり三男の中でやっと顔と名前が一致する。




「いつも姉がお世話になってます」


「ふふ。こちらこそです」


「真桜さんの話は時々聞いてますよ」


「え、嘘。変な事聞かされてない?」


「あの純ちゃんと友達ってだけで良い人なので安心してください」


「めちゃめちゃ嬉しい事言ってくれるね」


「純ちゃんは教室ですか?」


「うん。クラスの人と話し盛り上がってたから置いてきちゃった」


「純ちゃん友達多いですよね」


「そうね。男にも女にも人気だから時々妬いちゃう」


「あ、そんなに」


「でも、皆が仲良くしたくなるのも分かるから私は見守り隊としているんだけどね」


「ふうん。そうなんですね。でも、純ちゃん、真桜さんの事、親友って言ってましたよ」


「なにそれ。嬉しすぎて泣いちゃう」




三男の言葉に彼女は顔を綻ばせている。




「誠弥と真桜じゃん。珍しい組み合わせだな」




そんなところに次男が鉢合わせた。




「うわ、潤君。なんでいるの」


「うわって酷過ぎねえ?同じ学校なんだから会うのは当然だろ?寧ろ今まで会わないのが可笑しいくらいだ」


「潤弥君も誠弥君とは会えないんだ?」


「なんでか知らねえけどな。それより二人は何してんだよ」


「初めましての挨拶をしてたの」


「え?初めまして?」


「そう。やっと会えたの。とってもいい子だね」


「そりゃ俺の弟だからな」


「ん~それは何とも言えないけど」


「なんでだよ」




二人のやり取りを見て三男は次男に問う。




「潤君も真桜さんと仲いいの?」


「まあそれなりにな」


「それなりって地味に悲しいね」


「真桜には純香の事任せてるから結構頼りにしてるとこはある」


「それは嬉しい」


「真桜さんさっきから嬉しいしか言ってないですね」


「気持ちは声に出していかないとね」


「はは、そうだな」


「それじゃあ俺も素直に言うけど、ここから離れたい」




三男がそう告げれば二人はきょとんとした後周りを見渡した。


昼休みの購買前は人の行き来が多いせいで三人は大注目されている。




「あはは、佐々木兄弟が揃っちゃったからみんな気になってるんだね」


「真桜さんは何でそんなに余裕そうなんですか」


「片割れが常に一緒だと慣れちゃうかな」


「俺はいつまで経っても慣れません」


「誠弥は慣れないというか見られるのが嫌なんだよな」


「分かってるなら話しかけないでほしいよ」


「時々辛辣なのお兄ちゃんちょっと傷ついてんかんな」


「ゴメンネ」




しかしそんな兄弟の貴重なやり取りを見ようと更に人は集まっている。




「私はそろそろ戻るね。純香がそろそろ探しに来そうだし」


「それは早く戻ってあげてください」


「純香まで来たら更に注目集めちゃうもんなあ?」


「潤君も早く行って」


「え、俺泣くよ?」


「じゃあ、真桜さん、失礼します」


「無視?しかも誠弥が一番に離れるのかよ」


「潤君、バイバイ」




三男はしつこい兄に渋々別れの挨拶をして颯爽と購買へと去って行った後、二人もそれぞれ分かれた。



親友は三男に言った言葉を次女に聞かれていたらきっと笑われただろうなと静かに思ったと同時に、親友にしか打ち明けれない事もあるのだと言い訳しようと心に決めたのだった。

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