佐々木家恒例ジャンケン

第37話

佐々木家では基本的には長女が夕飯の買い物をしてくるのだが、休みの日は兄弟でジャンケンをして決めている。




「みんな、ジャンケンタイムがやってきたわよ」




長女がみんなにそう呼びかけると、散らばっていた兄弟たちが集まってくる。




「この前は私が行ったから私以外でジャンケンしてよ~」


「純香に無理矢理連れて行かれた俺も抜きでよろしく」


「何ふざけた事言ってんの。ジャンケンは公平かつ平和的勝負よ。しかも何年もやってきているその勝負に、この前行ったから今回は自分抜きで、なんて異例は認められないわ」


「待って、お姉の目が真剣過ぎんだけど」


「当たり前じゃない。これは真剣勝負なのよ」




長女がそう言うのも仕方がない。


育ち盛りの高校生3人もいれば食事量はとても多い。


故に荷物が多くなるのである。




「じゃあ、いくわよ」


「ちょっと待って!心の準備をする!」


「ジャンケンに心の準備が必要か?」


「毎回勝ち抜けしてるお兄には分からんだろう!負けて地味に距離のあるスーパーに言っておばさま方に好奇の目で見られる気持ちが…!」


「潤弥、どんな買い物の仕方してるんだよ…」


「普通だよ!」


「グダグダ言ってないでジャンケンするわよ。最初はグー、じゃんけん、ぽんっ」




長女の掛け声で5人が一斉に手を出した。


結果は、三男がチョキ、残り4人はグーという見事なまでの一人負けである。




「えぇ…こんな一発で決まることある?5人もいるのに」


「何百回としてたらそんなこともあるわ。はい、これ買い物リスト」


「しかも今回多い気がする」


「いつもと同じくらいよ。文句言わない」


「一人で行くの嫌だな」


「そんな目で見たって私は付いて行かないわよ」


「清ちゃんって冷たいよね」


「冷たくなんてないわよ。負けは負け。さっさと行ってきな」


「はは、こっちを見られてもなあ。俺もやることあるし」


「誠弥、ごめんね。私は行けない。なぜなら、勝負に勝ってしまったから」


「純ちゃん、別に勝負に勝っても行ってもいいと思うよ」


「でも、ごめんね…!」


「あいつはただ面倒くさいだけだな」




部屋に戻っていった次女の後ろ姿を見ながら次男は呟いた。




「因みに俺も面倒なので行かない」


「……この前、潤君掃除機解体してたよね」


「あぁ、したな」


「その後、清ちゃんが使ってたけど吸い込みずらいって困ってたよ」


「え、まじ?お姉にバレないようにちゃんと組み立て直したんだけどな」


「俺、その時は潤君が解体してたこと黙ってたけど…」


「待て待て。脅しか?は、はは、俺にそんな手は通用しないぜ」


「じゃあ、いいの?言っても」


「え、いや、それは…」


「解体したこと知ったらきっと清ちゃん怒るね。だって新しい掃除機頼んだって言ってたもん」


「え、嘘だろ?そんなに吸い込みずらくなってんの?」


「言ってもいいんだね?」


「せこい…!誠弥、いつの間にそんなずる賢くなったんだ…!」


「清ちゃーん、この前…」


「わーーーかった!!!!行く!!行くから!!」




三男の策略にまんまと乗ってしまう次男は急いで支度を始めた。




「あれ、潤弥も行くの?」


「不本意ながらな」


「じゃあ、これもお願い」




次男も行くと知った長女は三男のメモにあるものを書き足した。




「はあ?ちょ、米かよ!?30kg!?」


「男二人なら余裕でしょ」


「スーパーに30kgの米なんて売ってねえよ!」


「それがあのスーパーには売ってるのよ。素晴らしいわよね」


「30kgは流石にいじめだ!」




次男が嘆いていると後ろから長男がぽんと肩を叩いた。




「俺はいつもそれを運ぶために呼び出されている」


「え、お兄…可哀想…」


「だから、潤弥。今日くらいは頑張れ」


「お兄が言うなら」


「潤君早く行こう」


「よし、行こう。いざ、戦場へ!」




意気込んだ次男と三男が買い物へ出かけた。




「雅弥」


「なに?」


「いつもお米頼む時、車で来てるじゃない」


「はは。でも呼び出されてるのは事実だ」




笑って言う長男を見て、こいつだけは敵に回したくないなと改めて思う長女であった。

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