次女の悩み事

第36話

ある日の放課後。


珍しく1人で帰宅中の次女はこれまた珍しく戸惑っていた。




「あの、えっと、」


「直ぐに返事は貰うつもりはないので」




次女の目の前には他校の制服を着て頬を赤く染めた爽やかな青年が真剣な表情で立っていた。


というのも、数分前、次女が帰路にあるよく行くコーヒー屋さんから出てきたところを彼に呼び止められ


「ずっと好きでした」


とシンプル且つお馬鹿な次女にも分かる愛の告白をされたのである。




「返事というか、貴方と会ったの初めて、ですよね?」




戸惑いつつも、最もな疑問を問いかける。




「俺、ここでバイトしてるんで」




衝撃の事実を知り、よく行くお店なのに店員さんを把握できていないなんて、と次女は少しショックを受けた。




「あの、ごめんなさい」


「だから、返事はまだいいので」


「あ、いや、返事じゃなくて、顔を覚えられなくてごめんなさいって言う意味で…」


「あぁ、そういう…ははっ、そこは気にしてませんよ」




可笑しそうに笑った彼を見て次女は安堵する。




「でも、好きとか、まともに話したこともないのに分からないですよね?」


「しっかり話したことはないですけど、お店に来ているのをよく見ていて何となくどんな人なのかなっていうのは分かりますし、何より貴方の笑顔が好きなんです」




これまた直球な告白を聞いて、今度は顔を染めるのは次女の方だった。




「どれだけ時間がかかってもいいので、返事、考えておいてほしいです」


「…分かりました」




次女の返事を訊いて安堵した彼は今からバイトなのか、またお店には来てくださいね、と笑ってお店入って行った。





「…ただいまぁ」


「あれ、純香、おかえり。早いね」




先に帰宅していた長男は次女の声がいつもと違うことに気づき不思議そうに見ている。


因みに、残りの3人はまだ帰宅していないようである。




「どうしたの、純香。元気なさそうだけど。何かあった?」


「お兄って、告白されたらどうしてる?」


「告白?」




その言葉を訊いて長男は瞬時に察し、何処のどいつだ、と次女セコムが発動しかけているが頑張って抑えて答える。




「知らない人は基本断ってるよ」


「知ってる人は?」


「知ってる人は恋愛対象かどうか考えて返事してる」


「そっか…」


「告白されたのか?」


「…時間かかってもいいから返事を考えてくれって言われた」




ろくでもない奴なら断れと即答していたが、相手は次女に真剣なようである。




「そう言われたなら考えてあげたら?」


「…そうだよね。コーヒー屋さんの店員さんらしいんだけど、お店には来てくださいねって言われちゃった」


「え、あそこの店?」


「うん。お兄もよく行ってるよね」


(どいつだ…)


「あそこのカフェモカ好きなんだけどなあ」


「純香、今度一緒に行こうか」


「行ってもいいかな?」


「いいでしょ。言われたんでしょ?来てって」


「うん」


「来てって言われたってことは、自分の事を知って欲しいって事じゃない?」


「そっか」


「行ってどんな人かちゃんと知ってから返事してあげな」


「そうだよね。じゃないと、彼に失礼だもんね」




次女の言葉に我が妹はとてもいい子に育っているなと長男は密かに思った。




「よしっ、今日はお姉、帰り遅いらしいから私がご飯作っちゃお!」




いつものテンションに戻った次女はキッチンへ向かった。



(明日にでもお店に行ってどいつか見てこよう)



結局次女セコムが発動している長男は事前調査を計画するのであった。

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