31-40
三男観察日記
第31話
〇月×日(月)
今日は席替えをしました。
席は一番後ろの窓際でとても嬉しかったです。
そして隣は学校で有名な佐々木誠弥君でした。
私は一生分の運を使い切った気分です。でも、神様ありがとうございました。
○月△日(火)
今日は苦手な数学の授業で運悪く当たってしまいました。
苦手だし、問題の意味すら分かりませんでした。
昨日、運を使い果たしてしまったからかな…と思った矢先、隣の席の佐々木君がこっそり答えを教えてくれたので答えることが出来ました。
まだ運が少し残っていたのかな。
○月□日(水)
今日も数学の次に苦手な英語の授業で先生に当てられました。
英語の日本語訳は出来る!と思っていたら、よりにもよって英訳する方でした。
辞書を使って四苦八苦していると、今日も佐々木君がこっそり教えてくれました。
あまり話したことがなくて、少し怖いイメージだったけれど、優しいんだなと思いました。
○月◎日(木)
今日は体育の授業でバスケをしました。
運動は得意な方だけど、足を挫いてしまいました。
軽い捻挫だからすぐ治ると保健室の先生は言っていたけれど、この3日間で今度こそ運を使い果たしてしまったのだろうと思いました。
足が早く治りますように。
○月▽日(金)
やっと週末。欲しかった本を土日で読もうと思い、本屋さんへ寄りました。
買ったらすぐ帰ろうと思ったら佐々木君がいて少し話をしました。
佐々木君も小説を読むらしく、おすすめの本を教えてくれました。
まだ運を使い果たしてなかったらしいです。
*****
「この一週間で佐々木君にいろいろお世話になったし、お礼に何かあげようかな」
彼女は三男からおすすめされた小説を読み終えてからぽつりと呟いた。
3冊ほどおすすめされたうちのまだ1冊しか読めていないようだが、面白かったのだろう。
ぱらぱらと読み終えた小説を見ている。
「クッキー、はやっぱり重いかな。でもそれ以外思い浮かばないし…」
そう悶々と悩む彼女は数分した後、キッチンへ移動してクッキーを作り始めた。
週明けの学校。
三男は学校面倒くさいなあと思いながら登校し、自分の席に着いた。
「あ、あの、佐々木君」
すると、隣の女子から声をかけられた。
「なに?」
「あの、先週、いろいろお世話になったので、よかったらこれ…」
「……俺、なにかしたっけ?」
「えっと、授業で教えてくれたり、おすすめの小説教えてくれたり、してくれたから…」
「あぁ。別にいいのに」
「でも、助かったし、小説もどれも面白かったから」
「もう読んだんだ?」
「うん。凄く入り込んじゃって、直ぐ読んじゃった」
「それならよかった」
「うん。だからそのお礼でこれ受け取ってくれたら嬉しい、です…」
消え入りそうな声で彼女は言う。
相当緊張しているのだろう。手が震えているのが分かる。
それを見た三男は、
「分かった。ありがとう」
そう言って受け取った。
「よかった」
そして、彼女は安堵した笑みを浮かべた。
「俺たち趣味合うのかな」
「え?」
「あの小説、すすめても面白いって言ってくれる人あんまりいないんだよね」
「そうなんだ。結構設定とか好きだったけど」
「はは。逆に今度おすすめの小説教えてよ」
その言葉に彼女は驚く。
「え、あ、私のおすすめでいいの?」
「全然いいし、そう言ってる。あ、読んだことあるやつだったら申し訳ないけど」
「読んだことなさそうなの、選んでくるね」
「はは、よろしく。そう言えば、足治ったの?」
「へ?」
「先週足引きずってなかった?」
「あ、う、うん。体育でちょっと挫いただけだったからすぐ治ったよ」
「そうなんだ。よかったね」
三男が彼女に笑いかけると同時に、ちょうどよくチャイムが鳴った。
*****
○月◇日(月)
佐々木君がクッキーを受け取ってくれただけでも嬉しいのに、沢山会話が出来ました。
まさか足を捻挫していることを心配してくれているとは思ってもなかったので、少し、泣きそうでした。
まだまだ運は残っているのかな。
神様、もう少し、見放さないでくれると嬉しいです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます