長男に巻き込まれる長女
第28話
佐々木家長女は夕飯のメニューを考えながら夕暮れの佐々木家から最寄りの駅を歩いていると、数人の女の人に絡まれている男性が目に入った。
それに気づかぬふりをする。
(また女の人に絡まれてる)
その光景を見るのは初めてではないのでそのままその集団とは反対の方向へ歩き出そうとしたとき、中心にいる男性である佐々木家長男と目が合ってしまった。
が、やはり長女は無視して歩き出す。
「清香!」
しかし、長女の思いとは裏腹に長男直々に名前を呼ばた。
すぐさま振り返れば、満面の笑顔で手を振る長男の姿があった。
(あいつ…!!)
巻き込まれるのは勘弁だという事を目で訴えたが、長男は分かった上で長女の元へ歩み寄ってきた。
「清香。待ってたよ」
長女の至極迷惑そうな顔とは裏腹に相変わらず爽やかな笑みで長男は言った。
「雅弥君、その人誰?」
長男の取り巻きのうちの一人が訊く。
地元ではそこそこ有名な佐々木家兄弟を知らないという事は、少し離れた大学へ通っている長男と同じ大学の人なのだろう。
何故ここにそんな人がいるんだと長女が疑問に思っていれば、
「俺の大切な人」
と長男は言い放った。
「は!?」
「え!?」
長男の言葉に長女とその他の女子が驚く。
(何言ってるのよ!?)
「え、あの、」
「ん?どうしたの?」
「大切な人って…え、うそ…」
「彼女、さん、ですか?」
「……えっと」
「彼女、照れ屋だからあんまり聞かないでやって」
「あ、そうなんだ…」
「それじゃあ、俺、帰るから」
長男は長女に助け舟を出し、戸惑っている彼女達に別れを告げて、長女の肩を抱いて歩いていった。
暫く歩いて、彼女達から見えなくなったところで、
「んぐっ!」
長女は長男の脇腹に一発パンチを食らわせた。
「さっきのは一体、何?」
長女は黒い笑みを浮かべて、脇腹を抑える長男に訊いた。
「大学の人達なんだけどずっとついて来てて正直迷惑してたんだよ」
「へえ?こんなところまで?モテる男は大変ね?」
「家までついてくる勢いだったから清香がいてくれて本当に助かったよ」
「こっちは迷惑極まりないわよ」
「本当にすみませんでした。でもあんなに焦って戸惑う清香を見たのは久々だったなぁ」
「私は久々に雅弥に振り回されて心底腹が立ったわ」
「でも彼女じゃないって即否定しなかったのは俺のためだろ?」
「……生意気言ってんじゃないわよ」
「はは。ありがとう」
「一ヶ月、買い物の荷物持ちね」
「勿論引き受けます」
「早く買い物行くわよ」
そう言って長女は歩き出し、長男は長女の気遣いに暫く笑みが漏れるのであった。
後日、長男の大学で長男に美人の彼女がいるという噂は直ぐに広まったのであった。
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