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次男の闇クッキング2

第21話

休日のお昼時。佐々木家では男三人がリビングで固まっていた。




「なあ、お姉と純香どこ行ったの」


「昨日、買い物に行くって言ってたけど」


「昼には帰ってくるとも言ってたよな?」


「……二人とも。残念なお知らせがたった今入ってきた。二人ともランチして帰るらしい」


「「……」」




長男の知らせに頭を抱える次男三男。


そう、佐々木家の男三人は料理が壊滅的に出来ないのである。




「朝早くからどこに行ってんだよ!!」


「潤君、落ち着いて」


「はぁ~~~~~。朝の9時くらいに軽快に家を出て行ったけど、一体どこの店に行ってるんだ…」


「ま、雅君も大きなため息つきすぎだよ」




上二人をどうにか励ます三男。




「インスタントのラーメンくらいならあるんじゃない?」


「そうだよな。いくら本格派なお姉でもインスタントとか冷凍食品とかあるから俺達だけ残していったんだろうし」




そう言って三人はキッチンへ向かい棚という棚を探り、冷凍室も漁りに漁った。




「…なあ、お兄、訊いていい?」


「……なんだ?」


「お兄の片割れって鬼なの?」


「否定はしない」


「ここまでインスタントも冷凍食品もない家ってあるの?」




棚にも冷凍室にも食材はあるものの、食品ではなく食材なので三人とも絶望の淵に立たされているようである。




「しょうがない。外に食べに行くか」


「その方が賢明だね」


「二人とも外に行く準備して」


「はーい」




長男の言葉に素直に返事をする三男だったが、次男はなにやらキッチンで考え込んでいる。




「潤弥?何してるの。外に食べに行くよ」


「……いや、なんか俺、作れる気がしてきた」


「は?」


「潤君、やめときなよ。この前だってチロル失敗したじゃん」


「あれは、分量ミスだ!」


「失敗は失敗だよ」




そう、かつて大量のチロルで生チョコを作ろうとした次男だったが、何故か固まらず失敗に終わってしまったのだ(生クリーム入れ過ぎだったんだよ!by.次女)




「今日はなんか行ける気がするんだ!パスタあるし茹でて適当にソースかければそれっぽくなるって!」


「適当って言うのが既にアウトだよね」


「潤弥。無理しなくていいから」


「いや、作る!作らせてくれ!お姉をぎゃふんと言わせてやる!」


「趣旨ずれてない?」




次男は二人の言葉を無視して鍋を出してきてお湯を沸かし始めた。




「…熱湯に7分か。具は何を入れようかな」




パスタの袋に書かれている茹で方法を読んだ後、次男は冷蔵庫を漁る。




「雅君、これ止められないよ。どうする?」


「……そうだな。取りあえず何が出来るか見てから食べるかどうか決めようか」


「雅君は本当に優しいよね」


「不味かったら勿体ないけど即捨てるけどね」




二人はそう言って次男の料理をハラハラと見守る。




「よし、具材はこんなもんでいいだろ!」




次男は冷蔵庫からパスタと合わせる具材を決めたようだが、それを見た長男は眉間に皺を寄せる。




「待て。潤弥。お前は何を作るつもりだ?」


「折角ならナポリタンを作ろうかと思って」


「なんでナポリタンにカレー粉がいるんだよ」


「隠し味的な感じで入れようかと…」


「いらないから今すぐ仕舞って。それに何でレンコンとかも出してんの」


「食感って大切じゃん?」


「それこそいらないから。普通のやつでいいから」


「お兄!!」


「え、なに」


「冒険心って大切だろ!?」


「危険な冒険はしなくていいよ」


「えー」


「えー、とか言いながら切るなよ…」


「あ、もう7分だ。えっと、ザルに上げるっと…え、これだけでいいの?洗ったりしなくていいのか?」


「…さあ、俺はよく分からない」


「放置でいっか」





そして15分後。


次男はやっと全ての具材を切れたようでやっと焼きに入るらしくフライパンを出した。




「焼く順番とかあったっけ?」


「あったような気がするけど…」


「肉からって聞いたことはあるね」


「お、流石お兄。じゃあ、豚肉投入―!」


((ナポリタンに豚肉入ってたっけ?))




二人の疑問を他所にどんどん具を入れていく次男はどこか楽しそうである。




「よし、もう火は通っただろ!麺入れよ」




そう言って置いてあったザルからパスタを入れる。


が、麺と麺が引っ付いてしまって塊になっている。




「あれ!?やべえ、ほぐれねえ!」


「潤君、頑張って箸でほぐして!」


「ケチャップ入れたらほぐれるんじゃないか?水分だし」


「それだ!」


「え、潤君それは入れ過ぎだよ」


「やば、べちょべちょだ」


「水分飛ばそう!」


「火力アップだ!」


「焦がさないように気を付けろよ」


「うわー、フライパンの底にへばりついてるー!誠弥、皿!!」


「え、あ、はい!」




三男の出した皿に次男は勢いよくナポリタンを移した。




「出来た!」


「…具入れ過ぎじゃないか?」


「そんなことねえよ。ほら食べてみようぜ」




次男はわくわくしながら豪快に口にナポリタンを入れ、長男三男も恐る恐る口に入れた。





「え、待って、潤弥。これ、納豆入れた?」




一口食べた長男は青い顔をして次男に問うた。




「美味いかと思って入れてしまった」


「「……」」


「……やべえ、くそ不味い」


「破壊的な不味さだよ。レンコンも全然火が通ってないし」


「ゴリゴリしてるな」


「清ちゃんのナポリタンが食べたい…」




三人は静かにフォークを置き、ポイズンナポリタンを処理して外に食べに行く準備を各々し始めた。




一連の出来事を長女次女が知ると、それ以降次男は料理禁止令が出たのであった。

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