次男の認知度

第18話

ある平日の放課後。


佐々木家次男はとある学校の校門の前でとある人を待っていた。




「遅ぇ」




ぼそり、文句を溢し、手に持つスマホに文字を打つ。


そんな次男に校門から出てくる生徒達は珍しそうに目を向けている。


それもそのはず。自分達の学校の前に他校の生徒がいるのだから。




「ねえ、あれってさ…」


「え、絶対そうじゃん」


「写真よりかっこよくない?」


「話しかける?」




周りの女子がそんな会話をしているのも知らずに次男は待ち人を呆れながら待つ。


すると、




「あの、佐々木潤弥君ですよね?」




一人の女子生徒が次男に話しかけた。




「そうだけど」


「やっぱり!本人だって!」




彼女は周りにいた他の女子生徒達に言い、たちまち次男の周りには女子生徒が群がる。




「は?なんで俺の事知ってるわけ?」


「なんでって、潤弥君って有名ですよ」


「純香ちゃんがよく写真載せてたりしますからね」


「…純香の友達?」


「いえ、違いますけど友達になりたいなとは思ってます」


「純香ちゃん、可愛いって有名でSNSのフォロワー数も凄いですよ」


「それでよく潤弥君も写ってる写真とか回ってくるんですよ」


「……」


「潤弥君はSNSやってないんですか?」


「…やってない」


「やればいいのに!」


「私、絶対フォローする!」


「私もー!」




甲高い声を出しながら次男に提案する彼女達に心底うんざりしながら自身の妹にも若干の苛立ちを覚える。




「俺が載ってる写真ってどれ。見せて」




次男はスマホを出している彼女に言えば直ぐに写真を出してくれた。


見ればソファーでテレビを見ている所やスマホをいじっている所が写り込んでいる写真ばかりだった。




(帰ったらあいつのフォルダに入ってるデータ全部消してやる)


「ねえ、潤弥君、折角だし連絡先交換しない?」


「あ、私も交換したい!」


「私もー!」




次々と交換してほしいとせがまれるが次男はフル無視。


それに屈しない彼女たちの心は鋼のようである。




「ちょっと、君たち何してるの」




すると、後ろから注意の声がかかった。




「わ、副会長だ…!」


「副会長?」


「うちの学校の生徒会副会長ですよ」


「……へえ」


「余計な事は言わなくていいから。彼、迷惑してるでしょ」




副会長が注意すると一斉に皆帰りだした。威力は絶大である。




「奏太朗、副会長とかやってんのかよ」


「うるさい。無理矢理だよ」


「そんな事言いながら皆言うこと聞いてんじゃん」


「副会長って名前にビビってんじゃないの?」


「俺は違うと思うけどな」




次男はさっきまでの不機嫌そうな表情とは打って変わって面白そうに笑い、一緒に歩きだす。




「それより、学校まで来なくてもよかったのに」


「どうせ暇だったし。というか遅すぎ」


「ごめん。でも、潤弥は自分の認知度の高さを自覚すべきだ」


「知らん」


「まあ、純香の所為でもあるから一概には言えないけど。潤弥は顔だけはいいからね。さっきもそうだったけど言い寄る女は多いでしょ。一緒にいる俺の身にもなって欲しいよね」


「久々に会ったのに行き成り文句ですか」


「文句も言いたくなるくらい目立つんだよ」


「いや、全部俺の所為になってるけど奏太朗も十分目立つからな」


「それこそ知らん」


「相変わらず酷い奴だな」




楽し気に話している美男子二人にすれ違う人は気にせずにはいられないのだろう。ちらちらと見ている。




「誠弥は元気にしてる?最近遊びに行けてなかったからなあ」


「元気にしてるよ。純香も今日奏太朗が来るって聞いて楽しみとか言ってたな」


「純香とは時々会うんだけどな」


「純香とも遊んでんの?」


「いや、街歩いてたら大抵会うよね」


「男ひきつれて?」


「イエス」




次男は幼馴染の深い肯定を聞いて大きなため息を吐く。




「あいつ、まじで何考えてんだろうな」


「はは。いいじゃん。問題は起きてないんだし、純香以外の女の子もいたよ」


「そう言う問題じゃないだろ」


「お兄様は過保護だね」




次男は笑う幼馴染に冷ややかな目を向ける。




「純香の所為で見知らぬ女子に名前まで知れ渡ってうんざりしてるから帰ったらあいつの部屋におもちゃの虫大量に置いてやる」


「地味で最低な嫌がらせだね」


「本当ならもっと怖い思いさせたいんだけどな」


「部屋中に虫が大量にいたらトラウマ級の恐怖だよ」


「トラウマ植え付けさせてやる」


「程々にね」




そう次男に注意する幼馴染はどこか楽しそうであった。

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