三男の些細な疑問
第16話
「ねえねえ、おかあさん」
「なあに?誠ちゃん」
「どうして、きよちゃんとまさくんも、じゅんくんとすみちゃんも“ふたご”なのに、ぼくは“ふたご”じゃないの?」
幼稚園年中組にやっと上がったばかりの佐々木家三男は母に訊いた。
「そうね。誠ちゃん以外は皆双子ね」
「なんで、ぼくは ふたごじゃないの?」
「誠ちゃんは双子が良かったの?」
「…わかんない」
「あら、分からないの?」
「うん。ようちえんの みんなが いってるんだ。ぼくだけ“なかまはずれ”だって」
その言葉に母は、そう、と一つ頷いた。
「誠ちゃんは、清ちゃんたちに仲間外れにされてると思った事があるの?」
「ううん。だって、きのうも きよちゃんとまさくんが、えほんよんでくれたもん」
「そっか。嬉しかったね」
「うん。じゅんくんも いっしょに あそんでくれるし、すみちゃんも おままごとに いれてくれるよ」
「ふふ、皆優しいね」
頭を撫でて微笑む母につられて三男も笑顔になる。
「双子でも、双子じゃなくても、誠ちゃんは清ちゃん達と兄弟なんだからそんなこと気にしなくていいのよ」
母は優しく言った。
*****
「ねえ、双子ってどんな感じなの」
いつも通りリビングで兄弟五人くつろいでいると、ソファに座っている三男は徐に聞いた。
「どんな感じって言われてもな…」
「……はっきり言って気持ち悪いわよ」
「ソウダネ。少なくとも俺は清香と双子で嫌な思いしかしていないよ」
「その言葉、そっくりそのまま返すわ」
「とか言いながらお姉もお兄も仲良しだよね」
「この前も一緒に買い物してたよな」
「夕飯の買い出しに呼び出されるのはいつもの事だからね」
「雅弥はちょうどいい荷物持ちとして大活躍よ。あんた達も何かあれば雅弥を呼ぶといいわ」
「本当に清香は人使い荒いよな。ある意味尊敬するよ」
「褒めても何も出ないわよ」
「ははは、一ミリも褒めてねえよ」
テーブルを挟んで上双子は珍しく言い合うが、どこか楽しそうだと三男は密かに思う。
「お兄はまだマシだよ。俺なんていつもいつもいつもいつも、この18年間ずっと、この馬鹿と一緒にされてきたんだぞ」
「えぇ!?酷い!馬鹿は潤弥もそうじゃん!」
「はあ?一緒にすんなよ。成績トップなのに、お前の所為で全く信じてもらえない俺の気持ちが分かるのか!」
「それは分からない!ごめんね!全力で謝る!でも、それは私だけの所為じゃないと思うんだけど!」
「はあ?俺が悪いって言うことかよ」
「そうだよ!潤弥、いっっっっっつも変な事して先生に怒られてるじゃん!」
「んなことねえよ!お前の頭の悪さに比べればマシだ!」
「潤弥のそう言うとこ、よくないと思う!!」
「あんた達うるさいわよ」
いつもの様に三男を挟んで言い合いになる下双子を長女は一言で制する。
下双子は一瞬で静かになり、長男は小さく笑った。
「それより行き成りそんなこと訊いてくるなんてどうした?」
珍しい事を訊く三男を不思議に思う長男は訊いた。
「いや、何となく」
「そう言えば、昔、母さんに訊いてたよな。なんで誠弥だけ双子じゃないのかって」
「……なんで雅君が知ってるの」
「はは、面白いこと訊くなあって思ったからね」
笑う長男は三男より5つ上なので覚えていなくても可笑しくはない。
「確かに、誠弥だけ双子じゃないよなあ」
「言っとくけど、双子が生まれる方が珍しいからね」
しみじみ言う次男にすかさず長女がツッコむ。
「時々、羨ましくなるよ。双子って特別感あるじゃん」
どこか拗ねたような三男の言葉に四人は一瞬目を丸くしたが、上双子は優しく微笑み、下双子は楽し気に笑った。
「何言ってんのよ。私達からすれば誠弥は特別よ」
「そうだよ。俺達の大切な弟なんだから」
「それに誠弥がいないと俺らまとまらないと思うしな」
「それ、私も思ったー」
四人の言葉に次は三男が目を丸くした。
「誠弥がいてくれてよかったよ~!」
次女の純粋な言葉に三男は少し頬を染めて俯き、次男が頭をぐしゃぐしゃっと撫でた。
それを上双子は微笑ましく見るのであった。
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