次女と夏休みと成績表

第12話

20:00



ばたんっと扉の音の直ぐ後に、ただいまー、元気の良い次女の声が佐々木家に響いた。





「純香、おかえり」




リビングに入ってきた次女に長男が迎えた。




「おかえり、純香。ご飯は食べたの?」




長女も次女を迎え、訊ねる。




「ううん。食べてないよー」


「そう」


「うん!お姉のご飯が一番おいしいから断ってきた!」


「……作り置いてるからチンして食べて」


「ありがとー!お姉、大好き!」




長女が相変わらずあっさりと返せば次女は嬉しそうに冷蔵庫に入っていた肉じゃがをレンジに入れて温め開始する。




「あ、ねえねえ。皆、明日から夏休みだし海に行こうよ!」




キッチンから次女はリビングにいる兄弟たちに呼びかける。




「はあ?何でだよ。俺は嫌だね」


「えぇ!?それこそなんで!?だって、夏休みだよ!?海に行かないと夏なんて始まらないでしょ!」


「海に行きたいなら友達と行けよ。お前無駄に多いんだから」


「皆とも行くけどそれとこれとは別じゃん?」


「何が別だよ。同じだよ」


「えぇー、泳ごうよー、バーベキューしようよー」


「あぁ、バーベキューか。去年やらなかったし、いいな」


「ね!?お兄もそう思うよね!」




次女が言ったと同時にチンッと温め終了を知らせる音が響いた。




「でもバーベキューなんて海でする必要ないじゃない。庭でやるならいいわよ」




次女が電子レンジから肉じゃがを取り出していれば長女が言った。




「え!?いいの!?」


「清香がそんな事言うなんて珍しいな」


「そんな事ないわよ。私はお肉が食べたいだけよ。誠弥もそう思うでしょ?」


「え、なんで俺に振るの」


「どうなの?」


「食べたいけど…」


「よし!お姉もお兄も誠弥も良いって言ってるし、決定ね!」


「はあ?俺は?俺の許可はいらないわけ?」


「潤弥はどうせやりたいって言うでしょ!お肉食べたいでしょ!」


「そうだな、肉食いてえわ!!」


「よし!決定!」




双子のやり取りを見て、二人とも単純だな、と上双子と三男は密かに思う。




「でも、やっぱり皆で海に行きたいな~」




ジャガイモを口に放り込んでまだぼやく次女に長男は小さく笑う。




「海は友達と行った方が楽しいよ」


「でも…」


「そうだ。バーベキューの後に花火もしようか。それで許してよ」


「花火!?」


「うん。花火」


「しょうがない。今回はそれで許してあげるね」


「はは。ありがとう」




次女の頭を撫でる長男に長女はやれやれといった視線を送る。





「それより、純香。成績表は?」


「へ?」


「潤弥も誠弥も成績表見せてくれたけど、勿論純香も持って帰ってるのよね?」


「えっと…」


「早く出しなさい」


「……はい」




次女は佐々木家最高権力者に大人しく従い、次男はぽんと次女の肩に手を置いた。


それに涙目になっている次女を見れば成績表の中身は安易に想像が出来る。




「はい。どうぞ」




次女はソファーに座っている長女に頭を下げながら渡し、受け取った長女はそれを開き、長男も隣に来て覗き込んだ。




「うわあ。今回も見事に2ばかりだね」


「相変わらず体育と家庭科だけは5ね」


「あ、でも国語が3になってる。頑張ったな」


「……あのぉ、潤弥と誠弥の成績はどうなんでしょうか?」


「何言ってんの。潤弥も誠弥も5と4しかなかったわよ」


「誠弥はともかくなんで一緒に生まれてきた潤弥とこうも差がついてるんだろう」


「それは俺が聞きたいわ」


「ちょっとくらい分けてほしかったよー!」




次女はぽかぽかと次男を叩きながら訴えるが無意味である。




「そう言えば清ちゃんと雅君はまだ夏休みじゃないよね?いつから夏休みなの?」




下双子を面白そうに見ていた三男は上双子に訊いた。




「私は来週から」


「俺は再来週から」


「え、お兄まだまだ先じゃん!」


「はは、そうなんだよ」


「は?お前知らなかったのかよ。俺は知ってたけどな。なんならテストもまだ終わっていないらしい」


「えぇ!?そうなの!?」


「そういうことだから、バーベキューは俺が夏休みに入ってからがいいんだけど」




申し訳なさそうに長男は次女に訊ねる。




「テストがあるんだよね?」


「うん」


「私、お兄が夏休みに入ってからでもいいよ」


「あ、本当?」


「うん。テスト終わったご褒美だよ!」




次女が言えば長男は、ありがとう、と笑った。


それから下双子は早速バーベキューの計画を始めた。

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