三男、風邪をひく

第9話

「げほっ、げほっ」


「大丈夫?風邪?」


「……そうかも」


「顔色悪いし保健室行った方がいいよ」


「…うん、そうする」




教室で咳き込んでいれば友人に心配されて保健室に行くことにした佐々木家の三男。




「あら、珍しい。弟君の方じゃない。どうしたの?」




保健室に行けば保健医にそう言われ小さく会釈する。




「風邪ひいたみたいなんで、熱測ってもいいですか」


「いいわよ。あら本当。顔色、凄く悪いじゃない」




ちゃんと寝てる?食べてる?と質問攻めする保健医を三男は無視してベッドに腰かけて熱を測れば38.5℃という数字が表示された。なかなかの高熱だ。




「今日は帰りなさい。お兄さんかお姉さん呼ぶ?さっきまでお兄さんの方がいたんだけど入れ違いだったわね」


「いや、いいです。一人で帰れるんで。それより兄はまた何かやらかしましたか?」


「階段から飛び降りて着地に失敗して足痛めたって来たわ。あ、何ともないから安心して。誠弥君の方が重症なんだから。本当に一人で大丈夫?」


「大丈夫ですから、お願いです。二人にだけは言わないでください。二人に知られると絶対に、これ以上に、悪化すると思うので本当にお願いします。静かに帰りたいんです。ひっそりと帰らせてください」


「わ、分かったから落ち着いて」




顔色の悪い三男の必死の訴えに気圧された保健医は頷いき、それ見てほっと胸を撫で下ろした。


その直後、ばん!と保健室の扉が開いた。




「「誠弥!!」」




入口には見慣れた男女が二人いて、三男は驚いている。




「ちょっと!私が先に入るから!」


「いや、俺の方が先にドア開けただろ!」


「何言ってんのよ。誠弥の友達から偶々聞いて、態々教えたのは私だよ?」


「それはありがとう!でも俺の方が早かったし俺の方が保健室の事をよく分かってる!」


「意味分かんないから!私は先生と友達だし!」


「俺だってさっきまでここにいたくらいだし!」


「はあ?あんたまたなんかやらk「二人とも静かにして」


「「ごめんなさい」」




騒ぐ双子に頭を抱えている三男は注意し、双子は先生にも三男にも謝った。それを先生は笑って見ていた。




「先生、誠弥連れて帰りますね」


「本当?助かったわ。一人で帰るなんて言い出すから心配だったのよ」


「この子無理するとこあるんです。本当ごめんなさい」


「ほら、誠弥。おんぶしてやっから」


「……いい。歩ける。潤君こそ足大丈夫なの?」


「俺を誰だと思ってる。潤弥様だぞ?それにふらついてんだから、大人しく兄ちゃんの言うこと聞きなさい」


「鞄も預かってるから心配しないでね!」


「……なんで三つ?」


「なんでって私達の分に決まってるでしょ?」


「誠弥を家にひとりにしとけないからな」


「授業があるでしょ」


「可愛い可愛い弟の一大事に授業なんて聞いてられっか!」


「じゃあ、先生、また明日ね!」


「はいはい。誠弥君、お大事にね~」




笑って手を振る先生に三男は双子に呆れながらもぺこっと頭を下げた。




家に着けば今日の講義は昼までだったのか長男がリビングにいた。


そこに双子が、ただいま~、といつものように入れば長男は驚いた表情をした。


そして次男の背中におぶされているぐったりとした三男を見て一瞬で顔を真っ青にさせた。




「え、誠弥どうしたの?というか、え、三人ともどうしたの?」


「連絡入れたでしょー?誠弥が風邪ひいたの!」


「え?……本当だ。LINEきてた。というか、え、熱?大丈夫?」




長男はテーブルに置いていた自分のスマホを確認した後、三男の顔を覗き込んで訊く。




「…咳が、ちょっと出るだけだから」


「38.5℃あるってよ」


「え!?高熱じゃないか!ご飯はどうしようか。今日、清香バイトだから作り置きしてくれてるカレーしかないんだよな」


「……別に食欲ないから食べなくても大丈夫だよ」


「それは絶対駄目だ。取りあえず誠弥は寝ときな。潤弥、そのまま誠弥を寝かしつけてきて」


「いえっさー!」




次男は長男に言われた通り三男を部屋に連れて行きベッドに寝かせた。


三男は更に熱が上がっていたのかベッドに入って直ぐに眠りに着いた。



それから数時間経って夕暮れ時。




「誠弥が高熱で倒れたってどう言うこと!?」




長男から連絡を受けた長女は珍しく息を切らして帰ってきた。




「ただの風邪だと思う。今は寝てるよ。それより今日バイトじゃなかったのか?」


「可愛い末っ子が倒れてんのに働いている場合じゃないでしょ?」


「お前はバイト先の人に迷惑かけて…」


「雅弥だって純香が倒れた時、バイトの途中だったのに飛んで帰ってきてたじゃない。人の事言えるの?」


「うっ…」


「取りあえず、おかゆでも作ろう。純香、手伝って」


「はいはーい!手伝いまーす!」




長女はそう言って次女と料理の支度に入った。


暫くしておかゆが出来上がり、長男が部屋まで持って行った。




「あ、起きてる?」


「…起きてる」


「おかゆ食べれるか?」


「……食べれる」


「熱いから気をつけてな」




長男に言われ三男は起き上がりふーふーと冷ましながらおかゆを食べる。




「清ちゃん帰ってきたの?」


「うん。誠弥が心配だからって息切らして帰ってきたよ」


「…ただの風邪なのに。皆騒ぎ過ぎだよ」


「ただの風邪でも、皆、弟が心配なんだよ」


「……そっか。ごめんね」


「なにがごめん?誠弥、悪いことしてないだろ?」


「……じゃあ、ありがと?」


「ふふ、そうだな。治ったら皆にも言うんだよ?」




長男のその言葉にこくっと三男は頷いた。

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