長女、ナンパに遭う

第7話

帰宅するサラリーマンや学生が多い駅。



そんな駅前のベンチに座ってスマホをいじっている佐々木家長女はマナーをわきまえているのだろう。歩きスマホはしない主義らしい。




「あれ、佐々木じゃん?」





するとスマホをいじる長女に話しかける男が二人。


長女は彼らにちらっと目を向けた。



かと思うとまたスマホに目を移す。





「無視とか酷いな」


「……」


「よく見るとめちゃくちゃ美人じゃん。お前知り合いなの?」


「知り合いも何も同じ学科なんだよ」


「まじかよ。こんな美人な友達いるとか羨ましいな」


「はは。でもお前のとこにも美人の一人や二人いんだろ?」


「ここまでの美人はいねえよ」





なんて二人で勝手に盛り上がっている。



そんな彼らの存在を消し去っている学部で超絶美人で有名な長女は途端にきょろきょろと周りを見回し始めた。


その様子を見ていた自称長女の友達の友達は不思議そうに問いかける。





「もしかして彼氏待ってるとか?」


「え、お前、彼氏いたっけ?」


「遅刻する彼氏なんかより俺らと遊ぼうよ。どうせろくでもないんだろ?」


「はは、言えてる。俺なら絶対遅刻とかしねえわ」


「うるさいわね」


「…は?」


「うるさいって言ってんのよ」





痺れを切らしたのか長女は二人に“佐々木家にとっては普通の口調”で言い放つ。





「ぺらぺらぺらぺらと何言ってんのか分からないし、うるさいし、一回無視されたなら諦めなさいよ。それにあんた誰よ」


「はあ?誰って…俺ら授業一緒じゃん」


「何の授業よ。知らないわよ」


「まじで言ってる?割と傷つくんだけど」


「あんたが傷ついたって私にとっては凄くどうでもいい事ね。だって関係ないんだもの」


「はあ?美人だからって何言っても許されると思うなよ」


「許されると思ってないわよ。そっちの方が酷いでしょ」


「何がだよ」


「私が待ってる人はろくでもないだって?あんた達の方がよっぽどろくでもないわよ」





そう長女が言いきった瞬間、ずん、と彼女の頭がほんの少しだけ下がった。





「こら。清香。言い過ぎだ」





長女が待っていた長男が彼女の頭をぐいっと更に上から押してそう注意した。



突如現れた第三者にナンパ男二人は驚いている。



それも無理はないだろう。


佐々木家長男は長女が気づかないくらい気配を消して現れたのだから。





「雅弥遅いのよ。何分待ったと思ってるのよ」


「ごめん。でもこの前は清香が遅れただろ?しかも俺、さっきまで授業だったんだけど」


「それを見越してこの時間にしたんでしょ?授業終わって何分経ったのよ。一体何してた

の」


「……まあそれは置いといて。早く行こう」


「どうせ女に捕まってたんでしょ」


「本当に口悪いな。直した方がいいぞ」





なんて会話をしながら駅に向かう双子に放置されたナンパ男二人は咄嗟に二人を止める。





「おいおい。ちょっと待てよ。放置はねえだろ」


「ナンパ野郎を放置して何が悪いのよ」


「だから言葉遣い…」


「そっちの男なんだよ。彼氏か?」


「「……彼氏?」」





彼の言葉に双子は声をぴったりと揃えて至極不思議そうな声を上げた。





「ち、違うのかよ」


「あはは。俺が清香の彼氏なんて面白いね。絶対嫌だ」


「はあ?私こそ願い下げよ」


「じゃあどういう関係だよ!」


「君こそ、清香とはどういう関係?」


「は?」


「どういう関係なの?」


「それ、は」


「君の方が赤の他人だよね。うちの大事な清香にその汚い手を出さないでほしいな」





長男が二人に微笑んで言い放つが目が笑っていないのを見ると相当怒っているのだろう。


長女も察したのか黙っている。





「清香とは同じ学校なんだっけ?」


「……そうだけど」


「もう清香には話しかけないでね」





長男は爽やかに笑って言い放ち、長女の腕を引いて駅の中に消えた。





「雅弥、感謝してる」


「えぇ?珍しい。いつもなら余計な事言うなって言うのに」


「うるさい。あいつ鬱陶しかったのよ」


「はは。余計な虫は駆除しないとね」


「雅弥が言うと冗談に聞こえない」





冗談じゃないかもね、笑っていう長男に長女は肩を竦めた。

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