第34話

真っ直ぐ目を見て言えば旭奈が目を見開いたのが分かった。


顔の赤みは影になっていてよく分からないけれど、前に先生の事を訊いた時と同じ反応だった。


それに、少しは意識してくれていたのかな、なんて愚かなことを考える。




「でも、私…」


「まだ、」




俺の言葉に返そうとした旭奈を俺は制した。




「まだ、返事はしないでほしい」


「でも…」


「俺の事、ちょっとは男として意識しろよ」




苦笑いで言えば旭奈は顔を少し歪めた。


それに申し訳なく思いながらも俺は言う。




「頼むから、もう少しだけ、真剣に考えて」


「……」


「お願いだから」




旭奈は絞り出すような声で放たれる言葉を静かに聞く。


そして、少し間を置いから小さく頷いた。



その少しの間が俺にとってはとても、とても長くて、怖くて、辛かった。

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