第33話

「前に俺の言ったこと覚えてる?」


「……?」


「好きな人の話」




言えば、あ、と小さく声を漏らした。



旭奈はあれから分かったのだろうか。


ずっと考えて、絵を描くスビードが遅くなる程悩んでいたが分かったのだろうか。


分かったのなら意識をしてくれただろうか。


少しくらい、一瞬でもいいから男として見てくれただろうか。



分からなかったのなら分からないままでいい。


これから伝えるのだから。これから意識してくれればいいんだ。



また、悩んでくれればいい。



俺は足を、止めた。


それにつられ旭奈もほんの少し前で足を止め、こちらを見た。




「ずっと、好きなんだけど。旭奈のこと」

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