第32話

「寂しいなぁ」




足元を見ながらそう呟く旭奈は当たり前のように隣を歩いている。



それを横目に、俺はまだ何も始まってすらいないのではないのか、ふと思った。



まだ、スタートラインにすら立っていない。


俺は旭奈に何も、伝えていない。伝えようともしていない。


それなのに何が『終わる』だ。


俺はどこまで弱いままなんだ。


待っていたって何も変わらないのだから、いい加減強くならないといけないだろ。



俺は隣を歩く彼女に言う。




「これで最後になるのかは、旭奈次第だ」




前を見て放った俺の言葉に旭奈がふっ、と視線を上にあげたのが分かった。

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