第21話

「ねぇ、秘密ってことはいるんでしょ?誰?私の知ってる子?」




シャツの裾を控えめに引っ張りながら訊く旭奈は自分だけ知られていることが嫌なのだろう、しつこく訊いてくる。



ここで知られると失恋確定なのだから、少しくらい意地悪をしても許されるだろう。


そう思うと何故か楽しくなり頰が緩んだ。




「あ、何笑ってるのよ!」


「何言ってんだ。笑ってないから」


「いいや、笑ってたよ!私は見た!……そうだ、ヒントはないの?」


「ヒント?」


「うん。クラスとか部活とかでいいからお願いします!」




必死になる旭奈が面白くて可愛くて愛しくて、だけど、お前が好きだ、なんて言えるわけもなく、旭奈の言う“ヒント”ではないかもしれないけれど“分かりやすいヒント”を口に出す。




「俺と一番仲の良い子」




ほぼ告白に近いそれを聞いた旭奈は悶々と考え出す。


いつも一緒にいるのに分からないのかと少しショックだが、今は考えて考えて悩めばいい。


そのうち分かって俺のことを意識してくれればいいんだ。



そんなことを考えている俺は相当性格が悪いのだろう。


しかし、それくらい許してくれたっていいだろう?


三年間、我慢し続けたのだから、それくらい許してくれよ。



それからの暑い暑い帰り道、旭奈はずっと、隣で悩み続けていた。

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