第17話

「祐人を見分けられてもなぁ」


「何言ってんだよ。俺のことを絶対に見間違えないってことは、俺はお前の目印になれる。必ず助けてやれるだろ?」



だから、ずっと俺だけを見ていてくれよ。



最後の言葉だけは前と同じで、口に出せなかった。


それは彼女の気持ちを考えてなのか、やはり俺が弱すぎるだけなのか、一体どちらなのだろう。



もしかするとどちらにも当てはまるのかもしれない。


いつか、いつかその答えが分かる時が来るのだろうか。


それとも一生分からないままなのだろうか。




「それにさ、旭奈がそう見えていたならその色で合ってるんだよ。他の誰かが何と言おうと描いている旭奈がそう見えていて、それを塗ったならそれで合ってるんだよ」


「でも、思ってもない色を塗っちゃうんだよ?」


「その時は前にも言ったけど、俺に訊けばいい。俺はお前の目印なんだから、頼ればいい」


「……うん」


「俺達の見えている色だって、皆全く同じで正しいとは限らないんだしさ」




そうやって自分でもよく分からない言葉を必死で紡ぐ。

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