第16話

その表情を見ているとやっぱり辛い。



しかし、そんな彼女さえ好きで愛しいと思う俺は、可笑しいのだろうか。


好きな人をどうしても助けたいと思ってしまうのは、可笑しいのだろうか。


ずっと想っている人にどうしても振り向いてもらいたくて必死になるのは、可笑しいのだろうか。




「じゃあ俺は、白色になる。そうしたら、絶対見分けがつくだろ」




茜色から紺色へと綺麗にグラデーションされている空を見上げながら放つそれに、旭奈はぱっと俺を見上げたのが分かり俺も彼女を見た。



そうやって俺だけを見ていればいいのに。



俺はどれだけこんな思いをすればいいのだろうか。


いい加減分かってくれたっていいだろ。


先生ばかり見ていないで、少しくらい俺のことも見てくれたっていいだろう?



そんな馬鹿なことを思っていれば旭奈は俺へ向けていた視線を、すっ、と前に変えて面白そうに笑った。

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