第15話

「本当?」


「ん。先生だって喜ぶんじゃない?」


「そっかぁ」




しまった。




そう後悔してしまった自分を激しく殴りたくなった。



隣を見れば俺の言葉の所為で旭奈はまた先生を思い出していた。



俺の言葉を聞いていたはずなのに、先生を想うなんてとんだ悪魔だ。


俺がどんな気持ちか知ってんのか馬鹿野郎。


少しくらい、気づけよ。


少しくらい、意識しろよ。



なんて、卑屈になっていると旭奈は言う。




「私ね、思うんだ」




その旭奈の言葉にもやはり、俺は返事をしない。


それは三年間変わらないのでやはり旭奈も気にせず言葉を続ける。




「想いも数ある色に紛れている一色の色で、私はずっと見間違えているのかなって」




隣を見れば旭奈は俯いていて、二つに結んだ髪の間から白いうなじが見えているだけで表情は分からなかった。




「今日、緑の絵の具を探してた時みたいに、見分けがつかなくなっているのかな」



凄く、厄介だね。



旭奈が顔を上げたかと思えば、諦めたように笑った。

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