第14話

「やっぱり旭奈ちゃんは凄いな」


「えへへ」


「これ、飾っとこうか」


「え!?そんなのことしなくていいですよ!」


「でも、勿体ないしなぁ」




悩む先生は惜しそうにしながら旭奈に返し、旭奈は照れた顔を先生に見せないように俯きながらそれを受け取る。


その照れた顔も見るのは何度目か分からないけれど、こればかりは何度見ても胸が苦しくなる。



自分ではないのだと実感するのがその瞬間。


胸が痛くなるのもその瞬間だ。



そして、早くその空間から抜け出したくなる。





「ねえ、祐人」




沈みかけた夕陽に照らされるアスファルトから熱い熱気が放たれている帰り道、隣を歩く旭奈に声をかけられる。


その声にちらっと彼女を見るだけで返事はしなかった。




「コンクール、出てもいいと思う?」




そんな俺を気にせず訊く旭奈は何を迷っているのだろうか。


そこまで訊くのだったら出ればいいのに。


出たくて仕方がないのに何を訊いているのだろう。



思うが旭奈にとってはそう簡単な事ではないのだ。




「出てもいいだろ」




だから、俺はそうやって簡単に答えてやる。

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