第13話

俺は絵の具が並べてあるそこから一つ、色を手に取る。




「普通の緑でよかった?」


「……うん」




旭奈の返事を訊いて、名前の消えた緑の絵の具を渡す。


しかし、旭奈はそれを受け取ってパレットに出しても塗ろうとしない。




「塗らないの?」




不思議に思い訊けば、塗るよ!と旭奈はぱっと俺の方へ顔を上げて言い、色を付け始めた。


いつもの表情で作業をしている彼女を見て安心した俺は自分のキャンバスへ戻った。



それからは何事もなく塗れたらしく、部活終了時間には『向日葵畑』は完成されていた。





「わあ、凄い…!」




後片付けをし終わった頃に帰ってきた先生は旭奈の絵を見て感動した。



緑の行方が気になり先生と一緒に見ると、向日葵の葉や茎の部分が綺麗に塗られていた。


濃淡がちゃんと付いていて、それはちゃんと分かるんだ、なんて旭奈のことを少しでも知れたようで嬉しくなる。

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